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第2話
こいつのこと。
昔から、尋常なくモテていた自覚がある。自分のどこがいいんだかさっぱり分からないが、まぁ顔だと思っている。
俺はいつも輪の中心にいた。
あいつは、いつも一人で、真っ直ぐに前を向いていた。俺みたいなチャラさはかけらもなく、凛としていた。
俺も、あいつも、人には平等に接する方だと思う。だけど、あいつはなぜか俺を避けていた、と思う。それが、まぁ割と不思議だった。
生理的に無理とかそーゆーやつなんだろうか、と、無邪気な気持ちで聞いた言葉に、あいつは。
俺は、女子から告白されても、心動かされることなんて無かった。
ただの一度も。そんなこと、ありえなかった。
ありえない、はずだった、けど。
あいつが言った、そんな、思わず出てきたというような。好き、という言葉が。どこか、他の奴と違う気がして。
「俺のこと、好きなのに、なんで避けんの?」
今、思えば__。
「だ、って、…!」
何故か、いつもの凛とした声で無く。
薄く、掠れるような、必死で息をしているような、そんな声に。
「睦月くん…と、一緒の、空間…ッに、いる…だけで、う、嬉しすぎて…俺、ダメ、なのに……。」
最早、ふるふる、どころか、ぶるぶると震え始めた身体の、その意味を、
「い、今、も、しゃ、喋るだけ、で…も…ッ、」
知ってしまった時に。
「イキそ、なのにッ……」
きっと俺は、溺れてもいいのだと、
無意識に、思ったのだろう。
「へ〜ぇ…」
渇望したものが手に入ったような、
弄り倒せる玩具ができたような、
獲物を狙う獰猛なヘビみたいな、
そんな、感情が、渦巻いた。
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