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学校

桜木 信は、人気者である。 それは、本来の意味で。 「桜木〜、この前のテレビ見た?」 「桜木〜、ゲームしよー?」 「桜木くん、先生が呼んでるよ!」 「桜木!ちょっと手伝ってー!」 休み時間には、ざっとこんな用事で呼ばれている。一生だれかが隣に居んだよ。 あいつも、嫌な顔、しないんだよな。 「はぁ。」 隙がねぇ。 ついでにちょっと、イラつくが。 さいしょっから束縛するのもアレだろ。ほら。 桜木を眺めてたら、4限終わりのチャイムが鳴る。 「桜木〜!昼どうするー?」 こらおい、はえぇよ。話しかけるのが。 お前誰?いや、声聞きゃ分かるけど。 桜木に死ぬほど懐いてる、桂だよな? 「はぁ。」 またため息を一つ吐いて、席を立つ。 一番前の席に座っている桜木の肩を、後ろから掴んだ。 んで、桜木に話しかけてるやつと、目を合わせる。 「ダメ。お前、さっきも桜木に話しかけてたろ。昼休みは、貸せ。」 しーん。 おい、なんで教室中が静かになるんだよ。俺そんなに声デカかったか? 目の前のやつに至っては、ぽかーんとしてるし。 「えっ、えっ、えぇーーーっ?! あっ、はい、どうぞ!お邪魔してすみません!!」 「リアクションでかくね。」 「いつもどおりっす!!」 「あぁ、そう。んじゃ、借りてく。桜木、弁当?」 「ぇ、ぁ、うん。」 「俺購買。ついてきて。」 「うん。 あの、桂、ごめんね。埋め合わせはするから。」 「いやいや!睦月さんだし!怖いし!!いってら!」 「お前わざと?」 「いえっ、そんな滅相もない!! あっ、鈴木!逃げんな!俺も昼混ぜてぇーー!!」 桂はピューンと去っていった。 「マジで行動早ぇ。」 「うん。桂はそういうやつだよ。面白い。」 「へぇ〜、そう。」

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