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第9話

 日和と一緒にいた子は戸田(とだ)と名乗った。 戸田くんは日和と同じ講義をよく取っているらしい。  「学校での日和ってどんな感じなの?」 日和は俺たちの話を興味なさげに少し離れたところで野良猫を撫でながら終わるのを待っていた。この島はとにかく猫が多い。みんな人馴れもしてるし。 って、あ〜黒いズボンなのに近づくから毛だらけになってる。 「上原は大学じゃ無愛想ですよ。」 「そうなの?」 俺の前だとあんなに感情豊かなのに。 「一言で言えばクールビューティーですね」 「なんだそれ」 つい俺は吹き出してしまった。  他にも色々聞きたいことがあったが戸田君はこれからバイトだと言って行ってしまった。が、「学校以外での上原のこと俺も知りたいんで俺とも仲良くしてくださいよ」と言われた。  「ひよりーバス停まで送ってやるから帰るぞ」 やっと終わったか…。と言わんばかりの目で俺をじとっと見上げてくる。 「乗せてくれないの?」 「バーカ。警官が2ケツするわけねぇだろ。」 「誰も怒ったりしないよ」 「注意する側の人間がダメに決まってんだろ」 俺の乗ってきた交番の自転車に何故か一緒に乗ろうとする日和を連れて大学近くのバス停まで送ってやる。  「そういえばたえばぁちゃんの肉じゃが食べた?」 もうすっかり辺りも暗くなっていて星がチラホラ見えるその空を眺めながら日和が聞いてきた。 昨日はやっぱり男2人と言っても流石に食べきれずに微妙に残してしまった。 「そういえば忘れてたな」 今日は遅番で家に帰るのは明日の昼ごろになる。いくら冷蔵庫に入れているからってそんなに日持ちするものでもないし。 「悪いけど食べといてくれ」 ズボンのポッケからキーケースを取り出し日和に持たせる。 「え?」 鍵をじっとみた後にでかい目をぱちぱちと瞬かせて俺の顔を凝視してくる。 「いいの?」 「別にいいよ」 「なんならうちで食べてけばいい。」 たえばぁちゃんの家は俺の家からの方が近いし。タッパーは今度俺が返しておくし。 「でも肉じゃがだけじゃあれだよな…そうだ。冷蔵庫の中のもの使っちゃっていいから。日和、飯作れるだろ?」 隣を見れば一緒に歩いていたはずなのに誰もいない。 「日和?」 振り返ればキーケースを両手で握りしめてなにやら固まってる。 「な、なんで、なんでそういうっ!!!」 「ど、どうした?」 「バカっ!!!!」 真っ赤な顔でキーケース握りしめて走っていってしまった。 「なんなんだよ…」

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