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第3話
普段より早い時間に家を出て、通学路を歩いて行く
母から姉の忘れ物を届けるよう頼まれたからだ
サッカー部は週に2日朝練を行なっており、マネージャーの秋音も参加している
サッカー部のいる校庭に向かい、秋音を探すがどこにも見当たらない
「秋葉?」
「、先輩…」
先輩が走って僕のそばに来る
普段この時間に居ない僕の姿を不審に思い、声をかけに来てくれたのだろう
「どうした?」
「あ、えっと、秋音居ますか?」
「秋音ならそこに、」
僕の後ろを指さす先輩に従って後ろを振り向こうとすると、背中に衝撃と温もりを感じた
「秋葉!どうしたの?」
秋音が抱きついてきたのだ
「これ、忘れ物」
「あれ、置いていってた?ごめん!ありがとう」
忘れていった弁当を渡すと、秋音はニコッと人懐っこい笑みを浮かべる
明るくて優しくて、みんなから愛される秋音
この笑顔に先輩は惹かれたのだろうか
僕とは全然違う
嫉妬が心を黒く蝕んでいく
純粋で優しい実の姉に対し、こんな気持ちを持つ自分が嫌になる
先輩が好きな姉は弟に嫉妬などしない
こんな醜い僕は先輩に嫌われてしまう
「っ、じゃあ、」
やるせ無さに目頭が熱くなり、逃げるようにその場を去った
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