13 / 31

第13話

「どうしたの?あら、黒田(くろだ)くん」 僕がリビングに戻ってこないことを不思議に思ったのだろう、母も玄関に来て神妙な顔をする僕らを不思議そうに見つめていた 「お邪魔しています。あの、お話があるのですが、お父様はご在宅ですか」 「ごめんなさい、夫はまだ仕事から帰っていないのよ。もう少しで帰ってくるから、上がっていて」 「ありがとうございます」 先輩は人当たりのいい顔をして勧められるままに家に上がった 秋音は気まずそうな顔をして、僕を見る 「…達郎ね、秋葉が転校してからもずっと秋葉に会わせろって。私も今まではずっと黙っていたんだけど、達郎に、秋葉を、襲ったって、言われて」 「違う!」 「…それで、ついじゃあお腹の子は、って問い詰めちゃったの」 「っ、」 「ごめんね、秋葉。勝手に話してごめん。辛い時、何も出来なくて、ごめんね」 秋音はついには泣き出した 心の優しい秋音 先輩の想い人である秋音 結ばれるべきなのは秋音と先輩であって僕じゃない どうしてこうなってしまったのだろう 僕も、この腹の子も、先輩にとって邪魔者になってしまった

ともだちにシェアしよう!