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第14話
父が帰宅するまでリビングには母と秋音と先輩と僕の4人
涙ぐむ秋音と、黙り込む僕
重苦しい雰囲気に何とか話題を振る母と、その母に答える先輩の声しか聞こえないなんとも異質な空間だった
玄関の開く音がして、父の帰宅を知らせる声がする
役者が揃ってしまったと絶望を感じる僕を尻目に、この空間に耐えられなくなっていた母がホッと息をついて玄関まで父を迎えにリビングを出て行った
「黒田くん、話とは」
「あら、お父さん。話なんてご飯を食べてからにしましょうよ」
「いや、先に聞かせてもらおう」
父は何かを感じていたのかも知れない
宥める母を遮り、硬く厳しい顔と声でそう言った
「秋葉さんの、お腹の子どもについてです」
その言葉に母も表情を硬くする
「父親は僕です。申し訳ありませんでした」
先輩が土下座をするのを見て、思わず駆け寄る
「違う!先輩の子じゃない!違うから!やめて!」
「隠さなくていい、俺の子だろう。俺が秋葉を襲ってすぐ、秋葉は転校した」
「違うよ!僕はΩだもん!他にも相手が居たの!先輩じゃない!」
「秋葉」
先輩が僕の名を呼ぶ
僕が先輩の表情の中で1番好きで1番嫌いだった顔
秋音を、先輩が好きな人を見る時の笑顔を浮かべて
「もう1人で背負わなくていい。全部教えて」
「っ、」
「秋葉。その子は、俺の子だね」
もう限界だったのだ
その笑顔を見て、もう何も言えなくなった
僕は俯き、涙を流し、小さく頷いた
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