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最終話

「触るぞ」 そう言いながらも先輩の手はすでに僕の腹を優しく撫でていた 「あとどれくらいで産まれるんだ」 「…あと、3ヶ月くらい。4月20日が予定日です」 「そうか。…今まで1人で育ててきてくれてありがとう」 先輩はそう言って僕の大きくなってきた腹にキスを落とした 「これからは一緒に育てるから。頼りになれるように頑張るな」 「…もう十分、頼りになってます」 「じゃあもっと頼りになれるように頑張る」 「先輩は、頑張らなくていいんです。僕がしっかりしないと、お父さんなんだから」 「俺だってこの子の父親だろ。秋葉だけが気に負う必要はない。秋葉こそ、頑張りすぎだ。もっと甘えろ」 「でも、」 どちらも引かず軽く言い合いになっていると、お腹からぽこんと刺激を感じた 「…喧嘩するなって、怒られましたね」 「…だな」 腹を撫でていた先輩は初めて感じる胎動に驚いた顔をしていたが、目が会うとお互い自然と笑みが浮かんだ 愛する人と結ばれて、その人の子どもを産むことができる 僕はこの世で1番の幸せ者だ

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