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『誕生』

4月8日 予定日より少し早いその日に僕は達郎さんの子どもを産んだ 痛くて辛くて苦しかったが、愛する人の子どもが産まれると思うと幸せな気持ちになれた 長い時間を掛け、ようやく産まれた子を腕に抱くと歓喜で涙が溢れ出た 子どもは男の子で『(あらた)』と名付けられた 「お帰り」 「ただいま。達郎さんも、お帰り」 「ただいま」 達郎さんと暮らすための、2人だけの家 そこに新たに加わる小さな命 これからは3人での暮らしになるのだ なんて意気込んでいたが、育児がこんなに大変だとは思ってもいなかった 寝たと思えば泣いて起き、世話をする その繰り返し 数時間ごとに起きる新にあっという間に寝不足となった 達郎さんは育児にも積極的で新が泣くとすぐに気付き寝ている時もすぐ起きてあやしてくれる けど達郎さんは大学生で、僕は休学中の身 昼間は授業があり学校が終わるとそのままバイトへ出かける達郎に対し、家で家事と育児と課題を済ませるだけの僕 ヘトヘトになって帰ってくる達郎さんの休息の時間を奪うのは嫌だった 寝室を別にしようと提案したが断られたので、新の啜り泣きが聞こえたらすぐ新を抱えて寝室を出るようにした そうすることで達郎さんも途中で起きることなく、睡眠時間を確保できるようになった 達郎さんは朝になり起きれなかったことを僕に詫びるが、僕はそれで良かったのだ 「ふえ、」 新の声に眠い目をこじ開け、抱き上げようと腕を伸ばすが、それより先に新を抱き上げられる 「達郎さん、」 「おっぱいあげてからどれくらい?」 「え、と、1時間くらい」 「お腹が空いたわけじゃなさそうだ。俺が見るから、秋葉は寝てて良いよ」 「でも、」 「俺が起きないように頑張ってくれてるの知ってるから。明日休みだし、今は秋葉が休む時」 優しくおでこに唇を落とされ、新にするようにトントン寝かしつけられると寝不足の体はすぐに眠気を感じ、深い眠りに落ちていった 「ふええっ」 新の泣き声に慌てて体を起こす いつもより深く寝てしまったのか、啜り泣きで起きることができなかった 新の姿を探すが見つからずリビングに出ると、泣いている新をあやす達郎さんの姿があった 「達郎さん、」 「悪い、起こした」 「おっぱいなら起こしてくれていいのに」 「新には可哀想だけど、もう少し秋葉を寝かせてあげたくて」 そう言いつつも新がお腹を空かせているのは分かっていたようで、僕の腕の中に新を渡してきた 乳首を口元に持っていってやると勢いよく吸い付く新 ごくごくと満足そうに乳を吸っていた 「可愛いな」 「…うん、可愛い」 新という宝が増え、大変なことも多いが僕は今幸せだ

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