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『番』

新が産まれ、慣れない育児に四苦八苦しながらも僕らは幸せな日々を過ごしていた 両親と義両親は新の世話に協力的で、2人の時間を作るようにと進んで新を預かってくれた 新は食いしん坊で母乳を沢山飲んですくすくと育ち、無事生後3ヶ月を迎えた 「…あれ、」 朝起きた時から体が熱く、少し怠かった 学校へ行く達郎さんを送り出し、昼寝をしている新を見守りながら家事をしているとそれは起こった 「っ、」 ブワッと全身が熱くなり、動悸が激しくなる 久しぶりの感覚に少し動揺したがすぐに分かった これは発情期だ 慌てて母に新を預かってくれるよう電話をする 母はすぐ駆けつけてくれて、僕を心配しながらも新を実家に連れて行ってくれた 触っていないのにペニスが立ち上がり、アナルがしとどに濡れるのを感じる 達郎さんは大学の後、アルバイトがある 帰ってくるのは夜遅くだ 達郎さんの邪魔はしたくはない 電話をしてすぐ駆けつけて欲しい欲求を抑え、布団に籠る 久しぶりの発情期は重く辛かった 自分の手でアナルを弄るがうまく精は吐き出せず 溜まっていく欲と熱くなる体に段々と意識が朦朧としてきた 「秋葉」 愛する人の声が聞こえる 発情期の熱に浮かされた幻聴だろうか 「秋葉」 もう一度名前を呼ばれ、熱をもった頬を撫でられたことで現実であることを知った 「お義母さんから連絡があった。俺にも言って欲しかったな」 僕が達郎さんに連絡をしないことは母にはお見通しだったようで、母から達郎さんに知らせたようだ 達郎さんも僕が伝えなかった理由が分かっているようで、深く追及することはなかった 「…たつ、ろ、さん」 会いたくて会いたくて仕方がなかった人 その人が僕のために予定を投げ捨て駆けつけてくれた 我慢していたものが弾け、達郎さんに飛びつく 軽々と僕を抱きとめた達郎さんは熱に浮かされた僕の目を見て言った 「秋葉に発情期が来るのをずっと待っていた。俺の番にしていいか?」 そう言う達郎さんの瞳も欲に濡れていて、ヒートに飲まれないよう必死に我慢していることがわかった 「…噛んで、達郎さんのものにして」 言うが早いか、達郎さんは僕の体をうつ伏せに押し倒すと襟足をかき揚げ頸に噛み付いた この時を待ちに待っていた 愛する人と番になる瞬間 この上ない幸福感に満たされ、僕は射精すると共に意識を失った 「…んん、」 「秋葉!悪い、大丈夫か?」 目を覚ますと寝室のベッドで、隣では達郎さんが申し訳なさそうな顔をして僕の頭を撫でていた 不思議に思い体を起こそうとして達郎さんの謝罪の理由を悟る 体が鉛のように重たく、特に達郎さんを受け入れていただろうアナルはヒリヒリと熱を持っていた 達郎さんは意識を失っていた僕の体を貪り尽くしたのだろう 「…気持ちかった?」 「え?あ、ああ。すごく」 「ふふ、僕も」 記憶の奥底で何度も頸を噛まれ、奥を突かれ善がり狂う自分の姿があった 霞がかってはいるが発情期中の僕は達郎さんに抱かれ、幸せと快感を感じていたのを覚えている 何より、この首筋の痛みが彼のものになれた証だと歓びが体を包んでいるのだ 「番にしてくれて、ありがとう」 僕の言葉に顔を歪め涙を流す彼のことを、僕は心の底から愛しく思う

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