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『嫉妬』第2話

扉の開く音に振り向くと、バーテンダーの服にビニール袋を下げる達郎さんの姿があった 「あれ、秋葉のが早かったか」 大好きなお父さんの声に反応し騒ぎ出した新を抱っこ紐から抱き上げる達郎さん 代わりに渡された袋にはレトルトのベビーフードや子ども用の食器が入っていた 「え、」 「夕飯まだだろ?新にはレトルトだけど、食べていきなよ」 元から食欲旺盛だった新は離乳食を始めてからより食への欲求が強くなり、腹が減ると暴れて手がつけられないこともあったのでその気遣いは助かった 「ありがとう。あ、あとこれ」 「お、悪い。こちらこそありがとう、助かった」 持ってきたスマホを渡すと触ろうとする新をいなし、ポッケにしまった 「勝手に電話出てごめんね」 「いや、別に秋葉なら好きに触っていいんだけど」 そう言い言葉を濁す達郎さん 「…秋葉が俺のこと夫とか主人とか呼ぶの、すげぇいいわ」 照れたように言う達郎さんにこちらの方が恥ずかしくなり顔が熱くなる 僕が18歳になってすぐ、約束通り達郎さんはプロポーズをしてくれて僕らは入籍した 僕らの左手の薬指には真新しい結婚指輪が輝いている 「うへー、流石新婚さん。甘々しくて砂吐きそう」 光一さんの声に人前だったことを思い出しより恥ずかしくなった 達郎さんも忘れていたのか、少し顔を赤らめて気まずそうな顔をしていた 「秋葉くん、この後忙しいの?」 「え、と、新にご飯あげて、お風呂に入れてあげないと」 「そっか。どうせなら達郎のバーテン姿見ていけばって思ったんだけど」 思いもよらない提案に目を丸くする 達郎さんに目を向ける バーテンダーの服がとても似合っている この姿で働く達郎さん 「…見てみたい」 「決まり!新くんが寝たりぐずったりしたら奥に部屋あるし、帰りは達郎に車で送らせるから!」 思いもよらず、達郎さんの職場体験をすることとなった あの後すぐにバーの従業員さん達が出勤してきて、挨拶をすると笑顔で歓迎してくれた 1人を除いて 綺麗な顔をした、小柄な男性 名は(あゆむ)さんと言っていた 彼もきっとΩだ 彼は挨拶をした時から密かに僕を睨みつけていた 何となくわかる、彼は達郎さんのことが好きなのだろう 並んで開店準備をする達郎さんと歩さん 2人の距離の近さに少し胸がざわめいた

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