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『嫉妬』第5話
「秋葉、遅くなってごめんな。愛してるよ」
達郎さんは僕と歩さんのやり取りを聞いていたのだろう
見せつけるように僕にキスをし、抱きしめた
「っ、達郎!僕、達郎のことが好き!ねえ、僕のことも番に」
「触るな」
縋りつこうとする歩さんの腕を払い、達郎さんが歩さんを睨みつける
「っ、」
「俺が愛してるのは秋葉だ。秋葉以外に番は要らない」
「で、でも、僕の方が達郎を満足させられ、」
「俺は秋葉以外に勃たない」
「え、」
達郎さんは僕の腰を抱くと、固まる歩さんを置いて歩き出した
店の裏にある駐車場に停めてあった車に乗り、家路に着く
チャイルドシートに移動させても起きることなく、新はくうくうと寝息をたてている
まだ風呂に入っていないのに、気持ちよさそうだ
風呂は明日の朝入れるか、と考えていると赤信号で車を停車させた達郎さんが手を握ってきた
「今日、悪かったな。嫌な思いをさせた」
「そんなことない。光一さん達もお客さんもみんな優しかった」
「でも、傷ついただろ」
申し訳なさそうに繋いだ手にキスを落とす達郎さんを見て、先程のやり取りを思い出す
確かに歩さんに言われた言葉は嬉しいものではなかった
でも、傷ついた訳ではない
「…嫉妬、は、した」
「え?」
「…達郎さんと、好きな人と、あんなに近くで働けるのが羨ましくは思った。それに、歩さんすごい美人で、達郎さんとお似合いだったから」
僕の言葉に達郎さんは固まり、動かなくなってしまった
本心を話してほしい、と常日頃言ってくる達郎さんに甘えて話してしまったのは失敗だっただろうか
嫉妬する僕は、やはり醜くて愛想を尽かされてしまうのでは
「あ、えっと、ごめん、うそ、んんっ」
慌てて取り繕うと、腕を引かれ口付けられた
思いもよらない深い口付けに驚くが、気持ちよさに次第に体の力が抜けていく
「…嬉しい」
長く激しい口付けから解放され、荒くなっていた息を整えているとぽつりと呟かれた
「…え、」
「秋葉が嫉妬してくれて、それを言ってくれたことがすごく嬉しい」
言葉の通り本当に嬉しそうな顔で笑い、顔中にキスを落とされる
「秋葉、我慢できない」
そう言われ欲を孕んだ熱い瞳で見つめられると、体に甘い痺れが走った
甘い香りが車に充満し始める
頭がぼーっとして、体に変化が訪れた
達郎さんのラットによってヒートを引き起こされたのだ
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