2 / 3

第2話

「で?今日俺を呼んだのは?新しい猫紹介の記事を書けと?」 「まあそうだな」 「話が違う!俺は、絶対に口外しないって約束でっ……!」  惚けていたと思っていたアレグが一気に反応する。 「アレグ」    静かな声が、たった一言名前を呼ぶだけで、ピシャリと鞭を打たれたかのようにアレグの言葉は喉に引っかかった。 「雌猫に服は要らないだろ」 「だけど!」 「2度は言わない。お前の写真を載せさせてもいいし、お前の弟にこの姿を送ったっていいんだ」  主人の命は絶対らしい。震える指がサスペンダーのクリップを外す。時間をかければかけるほど、それが一種のストリップに見えることにも気がつかず、ゆっくりと服を脱いでいく。彼の性かは知らないが、シャツはきっちり畳んで自分の横に置く。  可愛い白い首には、綺麗な金が嵌っている。一見ネックレスにしか見えないが、見るものが見ればそれは首輪とすぐわかる。  それを軽く揶揄うと一瞬手が止まる。だが、不機嫌そうな舌打ちに促されるようにぎゅっと目を閉じてから、ハーフパンツを抜き取る。  履いていても恥ずかしいが、履かないとさらに恥ずかしいそれ。白い足の間で、異様に勃起したペニスが滑稽に揺れている。 「なんで雌猫なのにそんな立派なもんぶら下げてるんだ」  ゲラゲラと笑うと、彼はグッと俯いた。 「かわいいだろ?」  真っ白いハイソックスだけが残されている様子は、滑稽で愛おしい。全て脱ぎ捨てようとするのを止めさせた俺も、この遊びにすっかり乗り始めていた。  従順に従う体には、意外なことにピアスの一つも開いていない。訝しむ俺に気が付いたのか、ツァーリは笑いながら理由を告げる。 「きちんと大学には行ってもらっているからな。飾り立てていたら、悪い虫が寄ってくるかもしれないだろ?それに、見えないところに開いてる可能性があるだろ?」 「あれ、ハイスクールかと思っていた。ではもうすぐ20歳になる男がこんな可愛い格好をしているのか」  俺の揶揄に肩をすくめ、指を鳴らしてくるりと回す。膝がゆっくりと床を滑り、こちらに背を向ける。なかなか次の動作に移らない背中をツァーリが蹴った。 「もう一個増やされたいのか?」 「いいえ、ご主人様」  震える声で返事をし、ぺたりと上半身をつけたまま、自分の手で尻を広げて見せる。真っ白な尻の間から生える、彼の髪と同じ色の尻尾を自らの背中から回し、口で咥えるのがいじらしい。   ひくりと肛門が収縮して、中に押し込まれているグロテスクな黒が押し出されるが、俺が驚いたのはそれではない。 「これでこいつには主人がいるとわかるわけだ」  綺麗に脱毛された陰嚢に、鈍く銀が光っている。ひゅう、と下世話な口笛を思わず吹いてしまい、ツァーリが得意そうに酒を煽る。  これは確かに、ぱっと見では絶対にわかるまい。彼が女を抱こうが、きっと気が付かない。彼を犯そうとして初めて気が付くものだろう。でも彼に常に異物感を与え、隷属する身分と思い知らせるにはぴったりなそれ。 「5年後には部下として働いてもらうつもりだから、教育はしっかりつけさせねば。常に上位5%に入っていなければ、彼の弟の処遇を落とすと言ってある。幸い、あんなことがあった後でさえ一位で試験を通過するいい子だ」  ピアスを爪先で弾くと、子猫はぶらりと爪先まで震わせて体を硬くする。まだ開けて間もないのか、反応が初々しい。ずっと振動し続けるバイブに腰が勝手に動き、たらりと先走りが床に溜まる。まだ前立腺の刺激だけで吐精するには至らないのだろうか、ずっと辛そうに腰を揺らしている。  でもその方がいいのかもしれない。コントロールフリークの彼の主人が、自分の許可していない吐精に厳罰を下す可能性は減るから。 「もういい、座りなさい」  ゆっくりと体を動かし、元の姿勢に戻る。絶対に自分のペニスには触れないようにしながら、熱の籠った息を吐く。知ってか知らずか、彼の態度は男に媚びるそれになっている。跪座した状態で主人を見上げ、尻尾を咥えて膝を開く。   さっきまではふさふさとしていた尾も、噛み締められているせいでくたりと湿り始めている。熱に浮かされた声を上げない為なのか、やけにぎゅうと噛み締めている。 「客人にアレグを見せるのは初めてなんだ。粗相しても許してやってくれ」 「こんなに可愛い猫ちゃんなのに、俺が怒るはずないだろ?それにお前には相当怯えているようだし」 「人聞きが悪い」  おいで、と手招きをすると、主人の許可を確認してからこちらに向かってそろそろと這ってくる。差し出したままの俺の手の前まできて逡巡したのち、顎をゆっくりと掌に乗せる。 「まだお尻だけでイけないのか?」  「はい……っ、」  食いしばるものがなくなった顔は完全に何かを求めている。足を伸ばして、指先でペニスに触れると、あっけないほどの速さで膝を開く。いつから彼が我慢させられていたのかすぐに分かるほど睾丸は重く、足の指で転がせば、ひいひいという悲鳴があがる。端正な顔を歪め、彼は気づいていないかもしれないが男に媚を売るためだけの表情を晒して惨めに喘いでいる。 「いつから出させてもらっていないんだ?」 「せ、先週からです」 「散々寮で好きなだけ抜いてただろう?」  ツァーリはこの一週間の休みに彼をとことん楽しんだらしい。こともなげに言い放つと、アレグはスンスンと鼻を鳴らして惨めったらしく目を伏せる。理性ではそれがいかに恥ずかしいことかわかっているくせに、俺が足を引けば、腰が合わせて付いてくる。  それが可愛くて、裏筋が浮いているのに合わせて指を這わせると腰がガクガクと動く。はあ、と熱い息を漏らして慌ててぎゅっと自分のペニスを握りしめた。 「ご、ご主人様、許可を!射精する、お許しを!」  ぺたりと座り込んだ腰は、咥え込んだままの玩具をぐいぐいと締め付けているらしく、下腹が波打つ。理性で食い止められない体は滑稽なのにそれがまたいじらしく、ぎゅっと握っているペニスからはだらだらと先走りが溢れ続ける。  今までどんな罰が与えられてきたのかわからないが、彼は本気で懇願している。 「いいよ、出しなよ」  体を引いて、俺の足から体を反らしてどうにかしようとするのを追いかけて、ぬるぬるとした先走りを亀頭に塗り込んでやると、悲鳴に似た嬌声が上がる。 「お願いです、や、やめてくださいっ!」 「ご主人様のお許しがないと出せないのか?」 「はい、おねがい、お願いです!どうかっ、っ……!」  体を引くことを許されていない彼は、なんとか俺の手を緩めようとタポーチキの先に口付けして懇願する。その様子にますます楽しくなって、ソファから落ちるギリギリまで足を伸ばしそうになる。 「ご主人様っ!」    必死に自分でペニスを握りしめて悶絶する様子は、この高級な酒にちょうどよく合う。当のご主人様は、眉毛を釣り上げるだけで懇願を遇らう。 「今日こいつが満足するまでお前が奉仕できたら、好きなだけ出させてやる。それまでに出したら罰だ」 「そんなっ……!」  高級そうなラグに卑猥な雫が垂れる。若い体には辛そうな仕打ちに、ご主人様は冷淡だ。 「どうかお願いです」 「しつこい」 「……僕が、言いつけを守れるように縛めてください、」  どうか、と言いながら頭を下げる。美しく筋肉がついた身体が前屈し、ビクビクと動く腰が晒される。ご主人様は満足したらしく、「あれ」を取りに行くように命じる。  ぎゅうと自分のペニスを握りしめたまま、いそいそと自分専用の玩具箱に手を突っ込む。黒い皮の巻物と、ローションのボトルをなんとか片手に携えて、主人の足元に傅いた。 「立て。これだけ先走りを垂らしているならローションは不要だろう」  恭しく自分を苛む器具を差し出し、命じられるがままに立ち上がって先走りに濡れた可愛いペニスを差し出す。ああ、普通の男の子だったらこれが何に使われるかもわからないはずなのに。分かりきっている彼は、泣きそうな顔をしながら 主人にペニスを委ねた。 「あ、っっ、いた、痛い、っっ、」  「動くと中が傷付いて、この先何ヶ月も苦しむぞ」  楽しそうに脅しを吐きながら、バキバキに勃起した中に銀の棒を押し込んでいく。哀れな悲鳴が可愛くて、知らず知らずのうちにごくりと唾を飲み込む。腰を引くなと脅されても、彼自身ではどうにもできないようなので、親切な俺は手伝うことにした。 「えっ……!や、や……っ、」  尻をぎゅっと掴むと、嫌だと拒否しかけた言葉が彼の喉で詰まる。よくできたいい子だけれど、嫌がるのもまた一興ではあったのに。コントロールフリークが主人だから仕方ないのかもしれないが。  柔らかい尻をぎゅっと掴んで揉むと、中に押し込まれているバイブが前立腺を叩きのめす。もっとも、それが押し上げられて挿入されたばかりのブジーが直接前立腺をいじめているせいなのかもしれないが。アナルがひくひくと蠕動するたびに尻尾が揺れて、まるで本当に彼から生えているようだ。  震える膝で立ちながら、緩慢な仕草で尿道を責められて尻を嬲られる。このままガンガン突き上げて、ツァーリの顔面に可愛い子の子のザーメンをぶちまけてやるのも一興だ。  もっとも二度とこんな楽しい遊びに呼んでくれなくなりそうなので、絶対にしないが。  ガクンと膝が落ち、それに従い俺たちは彼を上から見下ろす格好となる。すっかり出来上がった彼は、それでも自分の成すべきことを心得てるらしく、開いたままの主人の膝の間に震える両手を揃えておいた。 「ご主人様、はしたない僕を、戒めてくださってありがとうございます……、ご奉仕させてください」  決して自発的とは思えない悲痛そうな顔で股間に頬ずりする。 「客人に奉仕するのが先だろう?犯してもらうための準備をしろ」  くるりと身体がこちらを向く。タポーチキの先にキスした後に、熱に蕩けた視線がこちらを見上げる。 「おきゃくさま……、」  愚かな俺の息子は、目の前で展開される痴態に、すでに熱を孕んでいる。首を伸ばしてそれにキスされると、自分でも反射的に血が集まるのを感じた。 「ぼくに、ご奉仕させてください……っ、」  股間に頬擦りする顎を掴むと、僅かに髭が手のひらを刺す。しっかりとした男の骨格なのに、振る舞いは、初めて褥に招かれた娼婦なようなもの。 「勃起したら、アレグの中に入れていいなら」 「はい、お客様……、僕のいやらしい穴を、お使いください」 「それなら、奉仕してもらおうかな」 「ありがとう、ございます」  俺がすぐに許可したので、安堵したようなため息を漏らす。そうか、ここで焦らすのもありだったのかと、自らの未熟さを悔いた。

ともだちにシェアしよう!