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2. 二人のケンタ

日曜に会う大澤さんも、下の名前がケンタだった。水曜のケンタは素性が知れないが、日曜の方はうちのシステムをいくつか開発した会社の人で、結構年上だった。 直近のプロジェクトで彼が関わる段階はほぼ完了したはずで、それを確認すると、 「とはいえ、次の水曜、また御社に伺いますよ」 と彼は言った。 「えっそうですか。どちらに?」 ヘッドボードにもたれてタブレットを操作していた大澤さんは、枕にうつ伏せた俺をちらっと見下ろした。 「確か、法務部です。どうしてそんな嫌そうな顔をするの」 「嫌そうな顔してます?特に嫌とかではないけど」 彼は濃いブラウンのカバーをぱたんと閉じてタブレットを脇に置き、俺の背中にもたれかかってきた。 「重いっす」 「すみません。川西さん薄いな。こんなに細っこいと思わなかった」 「大澤さんは、スポーツ何やってらっしゃるんですか」 「今は何もしてません」 「そんな筋肉してるのに」 「ジムとランニング程度で」 「何もしてなくない」 大澤さんは広い手のひらで俺の首根を包んで、ゆっくり揉んでくれた。気持ちいい、と俺が唸ると、起き上がって、よいっと掛け声をかけて俺にまたがる。 「痛かったら言ってくださいね」 「はい。整体とかに来たみたい」 彼は両手で背中に圧をかけるようにして、マッサージを始めた。肩甲骨の間や胃の裏あたりに指が強く食い込むのが気持ちいい。 「強さはいかがですか」 「うーん、ちょっと強いけど、これぐらいがいいです」 背骨に沿って何度か往復した後、首から肩を指圧してまた背中に戻り、今度は弱めにゆっくりと揉みほぐしてくれた。何か話そうと思いながら、俺は半分眠りかけ、腰を両手で掴まれた感触で意識が戻る。親指がツボを探る心地よさにまた目を閉じていると、突然下着に手がかかって、あっという間にずり下ろされた。 「わっ、うわ」 彼は足先から抜いた下着をシーツに投げ出し、裸の尻を片手で掴んで覆いかぶさってきた。 「油断しましたねえ」 耳に流れ込む穏やかな声とうらはらに、ジャージ越しの熱いものを俺の太ももの裏に遠慮なく擦りつける。 「いきなりパンツ脱がせるのひどくないっすか、真面目なお店だって信じてたのに」 「誘ったのはお客さまの方でしょう?お尻丸出しで」 「それは、センセイが、脱がすから、ん、あっ」 彼の手が当たって思わず声が漏れ、大澤さんも俺も盛大に噴き出した。 「声、はっず……エロ動画みたい」 「こんな設定の、あります?」 「あはは、わかんないです。俺あんま見ない」 振り向いて唇を合わせると、大澤さんは俺の顎を掴んで分厚い舌を伸ばし、頬から口元まで舐めてから体を離して、俺のTシャツをめくり上げた。 「たまに見る時はどういうのを見るんですか」 「大澤さんは?どんなの好きなの」 「今度、一緒に見ましょう」 両腕を上げてTシャツを脱がせてもらうともう体が熱くて、シーツの冷たさが嬉しかった。

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