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No.13 小糠雨

 小糠雨の中、軽い水飛沫を上げて、君が帰ってくる。 「濡れちゃった」  雲の様子があやしいから傘を持っていけと言ったはずだ。 「面倒だったんだもん」  わかっているよ。  濡れたシャツを脱がせると、君の頬がほんのりと色づく。 「暖めて、くれるよね?」  長い睫毛から白珠がほとりと落ちた。

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