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眠りたくない
「飲むか?」
声をかけられ、ニールは顔を上げた。いらないと首を振れば、エフレムは口元を歪めて笑った。
「なんだよ?」
「座ったままねてたのか? 涎が垂れてる」
グラスに注いだ、氷のないウイスキーを煽り肩をすくめたエフレムに、ニールはあわてて唇をこすった。
「派手に喘いでいたからな。疲れたんだろ。寝るなら、別の部屋をとってやるが?」
くしゃくしゃのシーツを見やって、ニールは嘆息する。
「いらねぇよ。かえらないとうるさいやつがいるんでな」
強がってみたものの、実際は腰が重くて立ち上がるのも億劫だった。汚れたシーツでもいいから寝てしまいたい。
が、エフレムの言葉を肯定するのはしゃくだった。ニールは酒でなく水を煽る。弱みがでないよう、しかめっ面で向かいに座るエフレムを睨んだ。
取引の後、エフレムはいつもウイスキーを一杯あけてから先に帰っていく。少しの辛抱だ。そう言い聞かせるニールの胸中をしってか知らずかエフレムはぬるそうなウイスキーを手の中で遊んで、ニヤニヤと笑っている。
「早くのんで帰っちまえ、って面だな」
「……っせえ」
舌打ちで返すニールに、エフレムはグラスを置いて煙草を取り出した。
「ほんと、いけすかねぇ奴だよ」
「だろうな」
長くなりそうな夜に、ニールは年期のはいった椅子にもたれかかった。
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