2 / 4

眠りたくない

「飲むか?」  声をかけられ、ニールは顔を上げた。いらないと首を振れば、エフレムは口元を歪めて笑った。 「なんだよ?」 「座ったままねてたのか? 涎が垂れてる」  グラスに注いだ、氷のないウイスキーを煽り肩をすくめたエフレムに、ニールはあわてて唇をこすった。 「派手に喘いでいたからな。疲れたんだろ。寝るなら、別の部屋をとってやるが?」  くしゃくしゃのシーツを見やって、ニールは嘆息する。 「いらねぇよ。かえらないとうるさいやつがいるんでな」  強がってみたものの、実際は腰が重くて立ち上がるのも億劫だった。汚れたシーツでもいいから寝てしまいたい。   が、エフレムの言葉を肯定するのはしゃくだった。ニールは酒でなく水を煽る。弱みがでないよう、しかめっ面で向かいに座るエフレムを睨んだ。  取引の後、エフレムはいつもウイスキーを一杯あけてから先に帰っていく。少しの辛抱だ。そう言い聞かせるニールの胸中をしってか知らずかエフレムはぬるそうなウイスキーを手の中で遊んで、ニヤニヤと笑っている。 「早くのんで帰っちまえ、って面だな」 「……っせえ」  舌打ちで返すニールに、エフレムはグラスを置いて煙草を取り出した。 「ほんと、いけすかねぇ奴だよ」 「だろうな」 長くなりそうな夜に、ニールは年期のはいった椅子にもたれかかった。

ともだちにシェアしよう!