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猫になったニール

「なんの冗談だ?」  部屋に入ってきたエフレムの怪訝そうな顔に、ニールは眉をひそめ首を傾げる。   冗談もなにも、ベッドのうえでゴロゴロしていただけだ。 「わからないのか? ……頭、触ってみろ」  いわれるまま両手を伸ばすと、ふわふわとした毛の感触。 「……にゃ!」変な声が漏れる。  慌てて飛び起き、備え付けの鏡へ走った。 「にゃんだ、これ!」  大きな姿見に写り込む姿に愕然とする。  寝転がっていたせいでくしゃくしゃの銀髪から獣の、猫の耳が生えていた。 「で、なんの冗談だ?」 「ひやぁっ!」  ぞくっと尾てい骨にはしる痺れに、ニールはのけぞった。 「なんだ?この尻尾取れないが?」  ぐいぐいとエフレムに引っ張られているのは、尻尾だった。 「ひゃっ、や、やめろっ!」   信じられないが、あきらかに猫の尻尾にしか見えない。 「ひ、ひっぱ……んにゃぁ」 「くっついている、のか?」   尻尾をわしずかみにしたまま、珍しく驚いた顔をみせたエフレムはニールのシャツを捲った。  ついでに下げられそうになったズボンを慌ててひっつかむと、舌打ちがかえってきた。 「かまわねぇだろ、どうせすぐに脱ぐんだ」 「構うにゃ!」 「にゃーにゃー煩せぇな」  意識しての口調じゃない。頬が高揚するのを感じて、ニールは唇を噛んだ。 「いったい、どうなっていやがるんにゃ……って、さわんにゃ!」 「手触りがいいな」  意識すれば、尻尾は動かせるらしい。ニールは懸命にエフレムの手を振りほどこうと尻尾をうごかすが、しっかり掴まれていてうまくいかない。 「なんだよ、気持ちがいいのか?」 「よくねぇ!」   尻尾を愛撫されながら、近寄ってきたエフレムに耳……猫の耳のほうを甘噛みされる。尻尾同様に感覚があるのか、身悶えると「へぇ」と意地の悪そうな嘲笑がかけられる。 「は、離れろよ」 「どうなってんだか、興味深い。……脱ぐのと脱がされるのとどっちが好みだ?」  もちろん、どっちも好みではない。が、拒否を許されそうにないエフレムのぎらついた視線に、ニールは耳を伏せてうなだれた。

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