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すべての道はヒモに続く 2

「あっ」  俺の反応を待たず首筋に張りついた唇がゆっくりと下がっていく。  ぬるりとした舌が皮膚の薄いところをなぞり、その感覚だけではしたない声が上がりそうになって口を塞いだ。 「……どうせ我慢できないくせに」  その様に気づいたヒバリさんが、無駄な抵抗だとばかりに低く笑い、それから俺のシャツの首元を引っ張り肩口に唇で触れて。 「んっ……!」  ぐっと差し込まれた牙に、反射的に体が跳ねた。  何度してもこの瞬間は慣れない。  ほんの一瞬の痛みと衝撃。 「あ、ああッ、あ……っ!」  だけど溢れ出した血をその舌が舐め取った瞬間、体がぐずぐずになりそうなほどの快感が体を走り抜けた。耐え切れない甘い声が塞いだ手の隙間から洩れていく。  もし今立っていたら膝から崩れ落ちていただろう。  それぐらいヒバリさんに血を吸われるのは気持ちがいい。  そしてきっと今、ヒバリさんの瞳は血を吸ったことによって赤く染まっていることだろう。この体勢じゃ見られないけれど、想像するだけでひどく興奮した。  ただただ気持ち良さが体を支配して、それ以外なにも考えられなくなる。  舌が微かな血も逃さないように丹念に俺の肌を舐めるから、そのくすぐったくも切ない感触に声が抑えられない。 「ふあ、ああ……ん、あっ」  長いのか短いのか、時間の感覚さえなくなる恍惚の時を終わらせるのはいつもそっけないほど呆気なく抜かれる牙の感触。  定期的な吸血を実現するため、ヒバリさんはいつもあまり多く吸わない。一回で食いつぶすようなバカじゃない、というのは本人談。 「物足りなそうな声出すなよ。明日も仕事だろ」  体を起こしたヒバリさんはまだ尖った牙を覗かせていて、瞳も薄っすら赤く染まっている。  本来なら怖いと思う変化なのかもしれない。だけどヒバリさんは顔が良すぎてそれもまたエロいとしか思えない。なによりその目で見られただけで痺れるように体が疼く。  その上、俺のことを気遣ってくれるようなセリフとなだめるような頭撫では卑怯だと思う。そんなことをされたら収まりがつくはずがない。 「でも、もうちょっと」  今までしたどのセックスよりも気持ちのいいこと。そう言ったらこれがどれほどの快感かわかるだろうか。そしてどれだけ中途半端で止められるのが辛いか。  テレビから流れるゲームのアップテンポな音楽が場違いに響く中で、俺はヒバリさんの袖を引っ張って、自分の肩口を示した。 「大丈夫だから、吸ってください」  頭がふわふわして明日のことなんて考えられない。考えられるのは今の気持ち良さだけ。 「……もうちょっとだけな」  早く、とねだるとヒバリさんはしょうがないなと呟いて再度俺の肩に噛みついた。ちりりとした痛みとそれを塗り替える快感にあっという間に思考が蕩ける。  エサである俺がねだって吸ってもらう状態はよく考えれば意味がわからない。けれど、こうなるといつも気持ち良さ優先で求めてしまう。後のことなんか、後で考えればいい。  だって好みの素晴らしくかっこいい顔に気持ち良くさせてもらえるんだ。その機会を逃したくはない。

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