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すべての道はヒモに続く 3
……ただ、頭が真っ白になるほど気持ちがいいけど、当然ながら最後の瞬間はないわけで。
解放の気持ち良さも、中ではじける感覚も、当然ないから結局いつも寸止めのような物足りなさが残る。
いっそのことそのまま抱いてくれれば、といつも思っているのに。ヒバリさんが必要としているのはあくまで俺の血液であって俺の体ではない。俺の体は言うなれば血液の保存袋みたいなものだ。
吸い終わればさっさとゲームに戻るし、すぐに飽きて見始めたテレビでまたなにか気になるものがあったようだから、明後日くらいにはまたなにか勝手に購入しているかもしれない。
家に居座り、俺の金で生活し、俺のときめきと血をエサにしながらも、その人外にいい顔ですべてをチャラにするヒバリさん。
人外。
そう、彼はヒモの吸血鬼なのだ。
俺、間宵 睦月 が吸血鬼のヒバリさんと出会ったのは、俺が同棲していた彼氏に振られて会社を辞めた後にどうするべきか悩んでいた時だった。
今考えれば、ブラック気味の会社で体を壊すまで働いて、ヒモ状態の自称夢見るバンドマンを養っていたことがおかしかったんだとわかる。
それでも顔はそこそこ良くて、疲れてる時に抱いてくれるという存在は俺にとって必要なものだったんだ。そもそもなんで疲れているかはさておいて。
その人が突然いなくなった後、ふらりと現れたのがヒバリさんだった。
好みすぎる顔に一気にのぼせ上って家に連れ込んだ俺は、そこで血を吸われて意識を失ってからヒバリさんが吸血鬼だと言うことを知らされた。というか文字通り身をもって知った。
だけどそんなことは好みの顔の前では些細なことで、その日からヒバリさんは家に住んでいる。
朝と雨が嫌いなヒバリさんは基本的に寝てるかごろごろしているかで、欲しいものがある時は俺の金を使うし、食事は俺の血液。
普通のご飯も食べるけれど、あくまでメインは俺だ。
吸血鬼に血を吸われる経験をして気がついたのは、それがものすごく気持ちがいいってこと。
今まで顔がいいだけで惚れてきた相手とのセックスはなんだったのかというくらい気持ち良くて、ついつい俺の方からねだりたくなってしまう。
なんでも痛みを紛らわす作用と血止めの作用が唾液にあるらしく、それのおかげで牙が刺し込まれる痛みも一瞬しかない。それ以降は体を征服される気持ち良さにひたすら酔うだけ。牙の跡は微かに残りはするけど、肩につけられているから脱いだりしなければ見えやしない。
だからこれは俺だけの気持ちいい秘密。
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