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闇夜に提灯 5
「それって、俺の血とヒバリさんの相性がいいってことですか!?」
「……どーだろーな。日光が嫌いなことには変わりないねぇし」
俺があまりにもくいついたからか、ヒバリさんはそっぽを向いて面倒そうに答える。
もちろん全部が全部平気になったわけではないのだろう。
それでもいいことには変わりない。だってヒバリさんが傷つく可能性が減ったと言うことなのだから。
「あ、じゃあこれ! ちょうどいいの、さっき福引きで当たったんです」
「なにそれ」
「晴雨兼用の傘です! 晴れてる日は日傘になるし、雨の日は普通に差せるからちょうど良くないですか。これがあったらもっと安全になるし、外に出やすくなるじゃないですか」
「いらねぇよ。別に好きで出たいわけじゃないから」
「でもちょうど当たったってことは、ヒバリさんにプレゼントしろってことですよきっと」
「いや、ただのお前のくじ運だろーが」
今までの話だったら、危険だし危ない真似はしないように外に出るものを渡そうなんて考えなかった。でも今なら有意義な使い方ができるんじゃないだろうか。
だって傘があれば移動範囲が広がるし、ためになるんじゃないかなと思った、のに。
本人からの反応は芳しくない。雨の日にコンビニに行くくらいなら使えるかと思ったんだけどな。
まあ、玄関に置いておけばいつかそのうち使うかもしれない。それぐらいでその話は終わらせ、俺は話題を変えた。
別にゴリ押すつもりもない。
「そういえばひき肉が安かったんで買ったんですけど、なに食べたいですか」
「ロールキャベツ。トマトのソースのやつ」
ハンバーグにミートソース、キーマカレーにグラタンと色んなメニューを考えていたけれど、羅列する前にヒバリさんの即答で今日の夕飯は決まり。
前に出したおかずをこうやってリクエストされるのは、なかなかの嬉しさだ。これって、前に食べた時に気に入ってくれてたと考えていいんだよね?
よし、キャベツは半玉しか買ってないけど気合で包もう。
そして今日こそいい雰囲気で吸血してもらいたい。ヒバリさんに気持ち良くしてもらえることを考えると、何事にも気合が入るというものだ。
そんな風にしてエサとしての自分に磨きをかける俺が、エサとしてのランクが上がっていると実感したのは、毎日のお迎えが続いたその後のことだった。
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