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闇夜に提灯 8

「……わかりやすい目をするな」 「え、伝わりました?」  いかがでしょうかと若干の上目遣いでヒバリさんの様子を窺ってみると、ものすごく呆れ切った視線で刺された。  どうやら俺の考えは目にも顔にも出ていたらしい。それとも単に俺の思考が単純すぎるのだろうか。 「ほんっとバカだなお前」 「ん……」  言葉のわりに口ぶりは優しく、ヒバリさんはグラスを置いて空いた手を俺の首の後ろに当てて唇を塞いだ。  え、あれ。望んだものとは違うけど、それ以上のロマンチックさではないか。  満天の星空の下でキスだなんて、俺の人生史上一番のロマンチックなデートじゃないだろうか。残念ながら相手は恋人ではないけれど、この際そんなの些細なことだろう、きっと。 「貧血でふらついて落ちられたらバカバカしいからな」  それが吸血ではなくキスを選んだ理由、らしい。  まるで言い訳みたいに呟いて、ヒバリさんはなおもキスを続ける。可愛らしいキス、深いキス、舌先で咥内をくすぐるような動きをしたかと思えば、すぐに引いて唇を柔らかく食まれる。  どれも勘違いしてしまいそうな甘いキスばかり。  唇にしか意識がいかず呼吸がうまくできなくて頭がくらくらする。これじゃあ血を吸われなくてもふらついて倒れそうだ。  食いつく唇が激しくて、まるで初めてキスをした時のように呼吸が覚束ない。それに戸惑っている間に、するりと滑った唇が首筋に触れた。ただいつもと違うのは、触れるのが牙の感触ではなく唇だけだということ。  薄っすらとしか残っていない牙の跡を舐めるように舌でなぞられ、唇で食まれ、もどかしさと恥ずかしさに体が震える。  星空の下だからだろうか。いつもと様子が違う気がする。 「ひ、ひばりさん……あの、あんまりされるといやらしい気持ちになってしまいますが……」 「ああそうか。じゃあやめる」 「えええ?」  いくらロマンチックといえど、されることをされれば体は反応する。  すっかり熱くなっている体をもてあましてお伺いを立ててみたら、あっさりと距離を取られてしまった。なんの躊躇いもなく離れた体が寂しい。 「そろそろ帰るか。あんまりこんなとこにいて風邪引かせたらまずいしな」 「え、も、もうちょっと!」 「お前のもうちょっとは危ないって、この前自分で思い知ったろ」  肩をすくめるヒバリさんの顔が良すぎて、渋々とでも頷くことしかできない。  確かにこの前もう少しと吸血を迫って、その結果次の日よろけたせいでクライスさんに味見をされた。  それに、ここで事に及ばれてもそれはそれでさすがに困っただろうけど。そんなにあっさり帰る用意をしなくたっていいじゃないか。せっかくのデートなのに。  ……いやでもこの流れなら、家に帰って改めてベッドのある空間に戻ったらワンチャン……。

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