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鬼の心エサ知らず 4

「血を吸ったら記憶が読めるとかいう能力があるわけじゃないですよね?」 「……あるかもしれねーだろ」  露骨に俺から視線を逸らすヒバリさんは意外と嘘がつけない人。ふてくされたように頬杖をつき、俺を見ようとしない時点でそんな特殊能力はないことがわかる。  ただそうなると、答えはおのずと限られてくる。 「……ヒバリさんって、いつから俺が『アルカ』だってわかってたんですか? 酔っ払った俺から血を吸った時? それとも……」 「……」  前に回り込んでその顔を覗き見ると、ヒバリさんの視線が泳ぐ。あからさまに口を滑らせたことを後悔している顔だ。 「わっ」 「おいバカ」  それでも無理やり視線を合わせようとしたら、体が傾いでソファーから滑り落ちそうになった。それに反応したヒバリさんが咄嗟に手を出してくれて、抱き抱えられるようにして止まる。  そのおかげで目が合わせられた。 「もしかして、俺たち前に会ってるんですか?」  だから適当な嘘を構築される前に、ずばり切り込んだ。  もしかして、俺が家に連れ込んだあの日が初対面じゃないんじゃないだろうか。  普通に会っていたらさすがにわかる。町中だろうがなんだろうが、認識するぐらいはっきり会っているならこの顔は忘れようがない。  でも、例えば忘れるくらいの昔だったら? 「……覚えてねーだろーよ。ガキの頃すぎる」 「ガキって、いつ頃?」  しばしの沈黙の後、俺をソファーへと座り直させたヒバリさんは、意を決したようにこちらを向いた。 「知らね。なんかこんぐらいでころころしてた」  ヒバリさんが手で示したサイズはだいぶ小さい。小学生以下だ。 「俺が、夜の公園で食事しようとしてたら、パジャマ姿の子供が泣きながらやってきてブランコ乗り出してよ。絵面がホラーすぎて女は逃げ出すし、子供はブランコから落ちてもっと泣き出すし。うるさすぎて怪我してた膝舐めて痛みを取ったんだよ。その時に血を味わってわかった。こいつアルカだって」 「膝……」  言葉につられて己の膝を見る。今見たって傷なんて残っていないけど、傷が疼いた気がした。  ブランコ、膝、痛くて泣いて、でも痛くなくなって。 「しかも傷治った途端に俺のことすごいすごいってニコニコしだして、今まで泣いてたこところっと忘れるし。こんな危なっかしい子供がアルカだなんて気づいちまったら、放っておけるわけないだろ。絶対悪いもんが寄ってくるに決まってるんだから。で、ちょいちょい様子見に来るたび案の定顔だけの悪い虫くっつけて痛い目遭ってて……ってなんで顔してんだ」  自分で独り占めするんじゃなくて、心配で長年様子を見続けるなんて、なんてお節介な吸血鬼。  でも違う。  俺はそういう認識をしていない。していなかった。

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