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月と吸血鬼 2

「あ、ひあっ、あ、い、ぃ……ああっ」  あまりの気持ち良さに、甘く蕩けた声が洩れ出すのを止められない。だって恥ずかしいくらい気持ちがいい。  余裕があれば「こんなの知らないっ」なんて煽ったりもできるのに、良すぎて言葉にもならない。  クライスさんの時のようにいっそ暗示でもかけてくれれば、そのせいにしてひたすらバカになれたのに。  理性は欠片だけだけどしっかり残っていて、だから俺を気持ちよくしてくれているのはヒバリさんだとしっかりわかってる。その上で悶えて求めて喘ぐ自分を認識できてしまうからタチが悪い。 「はあ……っ、あ、アァ、あ……っ」  ヒバリさんの銀色の髪が揺れるたびにきらめいて、まるで星が瞬いているみたい。  そんなロマンチックな光景とは正反対に生々しく肌を打ち付ける音、中を抉る水音、繋がった場所から響くぬめった音すべてが俺を煽る。  奥を抉るような深い抽挿と、浅い場所を擦るような動きはどちらもちっとも慣れさせてもらえず、されるがまま感じまくって。  やっと抱いてくれたとか、ヒバリさんが俺で硬くなってるとか、そういう感慨はどこかに飛んでしまった。 「ヒバリさん……っ、あ、ひ、い、イく、イっちゃう……っ!」 「ん」  なんにも考えられずにただただ揺さぶられ奥を突かれる気持ち良さに酔って洩らした言葉を、ヒバリさんはちゃんと聞いていたらしい。  身を倒して伸び上がるように距離を縮めたヒバリさんは、俺の耳に唇で触れた。 「いいぜ、イきな」 「~~~~~~~っ!」  そして近づいた耳元に囁くように吹き込んできたから、抑えきれるわけもなく。呆気ないくらいびくびくと体が痙攣するように達してしまった。  今までとは比べ物にならないくらいの恍惚とした瞬間だった。  ただ、その後覚えたのは、少しの羞恥心と罪悪感。焦らされたとはいえまだヒバリさんはイってもいないというのに、良すぎてあっという間に先に達してしまった。  それでも一気に弛緩した体を一度止まって支えてくれるヒバリさんの優しさにときめいて、まったく熱が冷めていないことに気づく。  一度放てば少し冷静になるはずが、受け入れているヒバリさんの欲を中でしっかり感じているせいか気持ち良さが全然終わっていない。むしろ体がまだ欲しがっているのがわかる。 「あっ、待って、まだイったばっかで――」 「待たない」 「ふあっ!」  一度終わったものだと思っていた気持ちが状況を受け入れる前に、再びヒバリさんが動き出した。まだ熱い中を突き上げられ、一気に小さかった火が燃え上がる。  そしてまだ火照ったままだった体を撫でるように掴まれ、キスとピストンですぐにまた快感の波に戻された。一度萎えたはずの自分のモノがまたゆるりと勃ち上がる感覚が恥ずかしい。 「好きなだけ欲しがれ。全部くれてやる」  そんな俺さえも肯定して、ヒバリさんは再び俺を快楽の世界に堕とした。  満月って、どんな人でも獣になっちゃうんだな、なんて甘い考えと余裕は、その後すぐに消え去ることになる。

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