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月と吸血鬼 4

 後ろ向きにもたれかかるようにして揺さぶられていたら、さすがにヒバリさんも俺の体力の限界を感じ取ってくれたらしい。 「いいよ、今日はこれくらいにしといてやる」  囁きとともに耳を甘噛みされて、また軽くイってしまった。  この数時間で全身が性感帯になったような気がする。どこを触られても感じてしまって、ずっと緩やかに甘イキしているみたいだ。  なによりそんなケンカの負け惜しみみたいな睦言あるだろうか。  今やそれは負けた方が逃げる時に言うセリフじゃないのか。一人勝ちしているヒバリさんがかっこよく言うもんじゃないと思うけど、つっこめる元気はない。むしろ突っ込まれてるのは俺の方だ。 「ん、あ、ひばりさん……?」  肩に触れたのは、久しぶりの牙の感覚。ぼんやりしている意識の中にその冷たさはやけにリアルだ。  それに気を取られているうちに、またゆるりと腰を動かしだしたヒバリさんの手が俺自身を扱き始めた。あらゆる刺激に意識が分散してどうしていいかわからなくなる。  それでも直接扱かれれば簡単に高まった俺自身が、ヒバリさんの手の動きに従って果てようとした瞬間。 「おやすみ、睦月。俺の夢見ろよ」  ぷつっ、と皮膚に牙が潜り込む感触がして、まるで雷が落ちたみたいな衝撃が体を駆け抜けた。 「ッッッッッッ!?」  頭の回路が全部焼け焦げたみたいなスパークする感覚が、強すぎる快感だとわかったのは理性なのか本能なのか。とにかくぶっ飛ぶような気持ち良さ。  そこで初めて、「血を吸われながら絶頂を迎えると天国を見られる」と言ったクライスさんの言葉の意味を理解した。体感した。  これ以上の快感はこの世に存在しないんじゃないかという恐いくらいの、まさしく絶頂。  声さえ上げられずただただ痙攣するように体を震わし、ヒバリさんの手を汚すように欲を吐き出す。気持ち良すぎてこんなに恐くなったのは初めてだ。  そして意識が落ちる寸前、体の奥にヒバリさんの欲が放たれたのを感じて、嬉しさとともに俺の思考は白い世界に溶けた。

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