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早起きはいっぱいの得 2

 朝からヒバリさんとベッドにしけこむだと? 一日中イチャイチャして抱かれて気持ち良くなって。  軽く想像しただけでもとんでもない一日になりそうで惹かれるけれど、そうなると次の日も丸一日使い物にならなくなるのはわかりきっていること。  だから唇を噛んでその想像を横に押しやる。 「……いや、お仕事しないと暮らしていけないので」 「別に俺が働いてもいいけど。ホストでもすりゃあすぐ稼げるし」 「⁉︎」  大人しくイスに座りフォークを手にしたところで、ヒバリさんがその状態でドライヤーをかけようとしながらさらりと爆弾発言をかます。衝撃的過ぎて思わずフォークを取り落としてしまった。  ヒバリさんが働く? いや、それ自体はまだしも、ホストだって? この顔で? 「だ、ダメです! ヒバリさんは働いちゃダメ! ぜひ家でゆっくりしててください!」  跳ねるように振り返って必死に説得する。  ヒバリさんのホスト姿は簡単に想像できる。たぶんものすごく似合うだろうしとろけるくらいかっこいいだろう。スーツ姿なんて似合わないわけがない。  ただ、ホストなんてやったらすぐにモテて大変なことになるのも簡単に想像がつく。指名するお客さんだって山ほどつくだろう。そうしたら俺よりもっといい相手が出てきてしまうかもしれないじゃないか。  ずっとヒモでいてもらわないと俺が困る。  これは休んでいられない。バリバリ働いてヒバリさんを家でゆっくりさせねば。 「ヒバリさん夜ご飯どうします?」  より一層働く意欲に磨きがかかったところで、俺は露骨に話を変えた。  ついでにいただきますと手を合わせてからフォークを持ち直して朝食をご馳走になる。出来立てのヒバリさん特製オムレツを朝から食せるなんて、色々乗り越えただけある。  ほくほくとオムレツを口に入れながら、ヒバリさんが髪を乾かしてくれる朝なんて、王族になった気分だ。まあ夜はヒバリさんが帝王みたいなものだから、バランスが取れているのかもしれない、なんて。 「あ、今日辺りそろそろお店に食べに来ます? ニンニクの匂いぐらいなら大丈夫なんですよね?」  ふと思いついたのは、仕事中にヒバリさんの顔が眺められる素敵な案。  本人の食べる分のニンニク抜きはいいとして、他の料理で使っている場合の匂いやそのものの姿がまずいかと思って今まで誘っていなかったんだ。  でも今なら平気そうだし、みんなにも同居人という程度には紹介したいし。……本当は恋人だと自慢したいけどそこは我慢する。 「あー、そうだな。ちゃんと店長と顔合わせとくか」 「嫌なんですか? ――わっぷ!」  なんとなく声に苦い響きが混じっていて、不思議に思って振り返ったらドライヤーの温風を浴びてのけぞる。  それが面白かったのか、ヒバリさんはぼさぼさと俺の髪を掻き回してからドライヤーのスイッチを切った。

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