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冬人から視線を逸らし、ため息を零す。
──なんだか、妙に疲れた。
話を終わらせようと、締めの言葉を口にする。
「いいから、冬樹になるなんて──」
俺の言葉を。
「──脱げ」
──冬人は、俺の求めない言葉で遮った。
慌てて、冬人へ視線を戻す。すると冬人は膝立ち状態になり、俺に近寄っていた。
そのまま冬人は、ズボンの上から。
──俺の逸物を、遠慮がちに撫でたではないか。
震える手は、まだ悩んでいるという証拠だろう。その顔も、踏ん切りがついたようには見受けられない。
中性的な顔立ちで、いつもは気難しい顔をしている冬人が……恥ずかしさに、顔を赤くしているのだから。
私事ではあるが、仕事に忙殺されて最近【そういうこと】とはてんでご無沙汰だった。
それに加えて、今の俺はアルコールで酔っている。……『酔っている』と自覚できるレベルではあるが。
そして、ダメ押し。これこそが、最も大きな要因。
──正直。
──今の冬人は、凄くキレイだ。
「……へぇ?」
──脅し足りない。
──もっと動揺させたい。
ふたつの気持ちが、俺を動かした。
冬人の言った通り、俺は自身のズボンに手を掛ける。
「……っ」
一瞬だけ、冬人は怯んだ。
だが、ここまできて引いてやるつもりはない。
それは俺だけではなく、おそらく冬人も同じなんだろう。
……だが、タチが悪いのは俺の方だ。
──俺は正直、キレイな奴なら男だろうが女だろうが、どっちだっていいんだからな。
「分かった、応じてやる。……だがな、冬人。いくら初めてとは言え、歯は立てるなよ」
「歯を、立てる……?」
俺の言った言葉の意味を、冬人は理解できていない。それでも、俺は引いてなんかやらなかった。
ズボンを寛がせ、下着から逸物を取り出す。
──そのまま。
「──んむッ!」
開かれた冬人の口に、俺はムリヤリ。
──自分のペニスを、突っ込んだ。
「んっ、んぐ……っ!」
奥までねじ込むようにすると、冬人が苦しそうな声を漏らす。当然だ。
「オイ、冬人。ただ口に入れてるだけで終わり……じゃ、ねぇよな?」
罪悪感は、ある。頭の片隅に、冬樹がチラついたのだ。
それでも、止めてやれそうにない。
冬人の腰に触れた、あの一瞬。
少し、肌が冷えていた。
だからか、やけに……。
──温かい口腔が、熱く感じた。
そんなものを与えられて理性がフル稼働するほど、俺はできた男じゃない。
「んん……っ、ん、ふ、っ」
目の端に涙を浮かべながらも、冬人が舌を恐る恐る動かす。
それがなんとも、くすぐったい感覚だ。
「ハハッ。ヘタくそだなぁ、冬人?」
「んぐっ、んん、ッ!」
一度腰を引き、また奥まで突っ込む。
俺から動くことを想定していなかったのか、冬人は驚いたような声を出した。
──キレイな顔が、苦痛やらなにやらで歪んでいる。
──存外、悪くない光景だ。
そう思った時点で、かなりヤバい状況だと。
俺はこの時、自覚するべきだった。
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