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淫猥な音が、リビングに響く。
「なぁ、そんなんで悦ばせてるつもりか?」
冬人の髪を、そっと撫でる。
すると呼応するように、冬人の体が小さく跳ねた。
「ふぁ、んむ……っ」
「口の中を男に犯されてるって、どんな気分だ? 嬉しいか? それとも、不愉快か?」
「んぐ、っ! ん、ッ!」
腰を引いて、また突っ込む。
その動作を数回繰り返すだけで、冬人は俺の服を強く握ってきた。きっと、膝立ちのバランスでも支えているんだろう。
そんな必死な様子でさえ、可愛く見えてくる。
……何度でも言うが、俺はキレイならば男でもいい。オマケに可愛さもあるっていうなら、文句なしだ。
だから、今の冬人を見ていると……。
──妙な情欲を、掻き立てられた。
無知ながらも、冬人は懸命にペニスを悦ばせようとしている。
……今、冬人はどんな気持ちでいるのだろうか。そんなことは当然、俺には分かるはずもない。
……さて。このままムリヤリ動いて射精するのもいいが、どうするか。
「なぁ、冬人。……そこまでして、冬樹にならないとダメなのか?」
冬人は俺の問いに対し、ペニスを咥えたまま小さく頷く。
テレビの音と、唾液の水音。まったくマッチしないふたつの音が、リビングに響いている。
このままフェラをさせていても、冬人は冬樹になることを諦めたりしないだろう。
俺が仮に、口の中に精液をぶちまけたって……それはきっと、変わらない。
──それは、大いに困る。
冬人の口から、完全に勃起したペニスを抜いた。
「は、っ。は、ぁ……っ」
いきなり引き抜かれたことに驚いているが、それよりも呼吸が苦しかったのだろう。冬人は肩で息をしながら、涙目のまま俺を見上げた。
「な、なんの……つもり、だ……っ?」
「気が変わった」
服の裾を掴んでいる冬人の手を、強く握る。
俺自身が立つと同時に冬人の手を引っ張り立たせるためだ。
「気が、変わった……? ……それは私が、うまくできないからか? あ、兄だって、最初はそうだったはずだ。私はまだ──」
ゴチャゴチャと喚く冬人を、ジッと見下ろす。
そして。
「──俺は今から、お前さんを抱く」
冬人にとっては信じ難いであろう言葉を、投げ付けた。
「……えっ、抱くって──痛っ!」
加減をせず、冬人の手を力任せに引っ張る。
そのまま、俺の自室に冬人を連れ込んだ。
「なに、なんで……っ。冗談──」
抵抗する間もなく、冬人は俺に引っ張られるがまま、部屋に入室。紡がれる言葉も全て無視して、俺は冬人をベッドに押し倒した。
冬人はベッドに押し倒されて、ようやく事態を理解したのだろう。突然、冬人は暴れ始めた。
「話が違う! こんなの──」
「恋人なら、リビングよりむしろ【こっち】の方が自然だろ? ……そんなことより、いいのか冬人? 止めるなら今の内だぞ」
「ひぁ、っ!」
それでも、力では俺に勝てない。
強引に、冬人の服へ手を掛ける。その際、冬人の腹に直接手が触れてしまったらしい。
俺の手の感触に、冬人は体を強張らせた。
「ちょっと触れただけだってのに、随分と敏感だな?」
「ちが──う、わっ!」
上半身を隠す服を、サッサと冬人から脱がす。
風呂上がりの冬樹を見て、裸は知っている。
だが、細身の冬樹と比べても……冬人は、細かった。
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