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 肩で息をする冬人の頬に、手を添えた。 「冬人。顔、見せてみろ」 「は、ぁ……っ」  隣に頭を並べて、強引に冬人の顔を覗き込む。  酸素を求めて枕から口元をずらしていたので、冬人の顔は容易に見えた。  涙に濡れた瞳。……だが、絶頂による快感で、その瞳はどことなく虚ろだ。  ぼんやりしているからか、俺を見ているようで、目が合わない。  ──そんな表情が、堪らなくエロく感じる。  禁欲的な印象だった冬人の、快楽でだらしなくなった姿。正直なところ、それはかなり、そそられる。  抵抗虚しく犯され、呆気無く処女を失った。  そう思っていたら、拒否する間も無く男に中出しされて……。  どんな気持ちなのか、いっそ洗いざらい知りたくて堪らない。  すると不意に、冬人が口を開いた。 「腕、を」 「ン?」  気付けば俺としっかり視線を合わせて、冬人が呟く。  弱々しくて、消え入りそうな声だ。 「腕を、解いてほしい」  服によって縛りつけられた腕を動かそうとして、冬人が訴える。 「あ、あぁ。分かった」  すぐに、冬人の両腕を結んでいた服を解く。  自由になった冬人の両腕は、力無く枕の上に落ちた。  だいぶ呼吸が落ち着いてきたのか、冬人は黙っている。  ……気付くと同時に、霧散していた理性が戻ってきた。  ──さすがにこれは、やりすぎだ。  ヤッている最中は気にしていても、見て見ぬふりをするように犯した。  だが、冷静に考えて──。……イヤ、冷静に考えなくても、とんでもないことをしてしまった。  ──元同居人の弟を、レイプだなんて。  ──そんなの、シャレにならないだろう。  バカな極論を撤回させるための行為のはずが、結果はどうだ?  ヤるだけヤッたくせに、冬人の考えを改めさせることはできなかった。これでは、ただのレイプに他ならない。  コイツの兄貴に──冬樹に、弁明しようがないのだ。  冬人へかけられる言葉が見つからず、俺は冬人ので汚れた自分の手を、ティッシュで拭う。  そうこうしていると、おもむろに冬人が立ち上がった。 「冬人? どこに行くんだ?」  ベッドから降りた冬人に、声をかける。  冬人は俺を振り返らず、いつもと同じく淡々とした声で答えた。 「体中が、ベタベタして気持ち悪い。シャワーを、浴びてくる」  ベッドから降りた冬人は一度、足をもつれさせて、転びかける。  すかさず、俺は手を伸ばしかけた。 「あ、オイ。一人で大丈夫か? 俺も一緒に──」  フラフラになった冬人は、壁に手をつく。  だが、俺を振り返らない。 「──一人に、してほしい」  俺の言葉に、力なくそう答えた後。  冬人は、部屋から出て浴室へと向かった。 5章【親友の弟の目的を知った俺は、】 了

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