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 どうにも、モヤモヤが止まらない。  それは【冬樹になるのを止めるつもりだったのに、結果として結びついてないから】か?  冬人はテレビ画面を時々眺めながら、淡々と朝食を食べて進めている。  ──目の前には、昨晩セックスしたばかりの相手が座っているというのにだ。  冬人は気にした様子を見せず、食事をしている。  そんな冬人を眺めていた俺だったが、不意にハッと意識を取り戻す。  ──バカかよ、俺は。だったら俺は、いったいどうしたいんだよ……ッ!  俺はただ、冬人が冬樹になろうとする考えを止めたかった。脅すために、冬人を襲ったのだ。  けれど結果として、俺がしてしまったことは中途半端な行為だった。  愚かしいことをしてしまった自分の行動に、果たして正しい意味があったのか。今ではもう、分からない。  ……いや、違う。  ──きっと、なかったのだろう。  ならば、いっそ冬人が気にしていないのだとしたら。それは俺にとって、もしかすると【いいこと】なのではなかろうか。  結果的に、俺は冬人の考えを変えられなかったのだ。ならば、昨晩のことはお互い水に流した方がいいかもしれない。……人として、最低ではあるが。  だが、だとしたら……。  ──冬人が昨晩のことを気にしていないような態度を取って、俺はどうしてモヤモヤするのか。  そんなこと、正しい振る舞いが分からない俺が考えたところで、答えなんて出るはずもない。 「平兵衛さん。食べないのか」 「えっ? あ、イヤ……いただき、ます」  シンプルだが、おいしそうな朝食が目の前に並んでいる。さすがに、空腹を感じてくるな。  ……そう、だ。考えたって、しょうがない。後悔するよりも、今は冬人をどうにかする方が先決だ。一旦、過去のことを考えるのはやめよう。  両手を合わせた後、俺は冬人が作ってくれた朝食を食べ始めた。  * * *  ──突然のことだった。  その日の晩から、冬人の様子がおかしくなったのだ。  昼からの仕事が終わり、マンションに戻ってきた俺は、部屋の中に居る冬人を見て【違和感】に気付く。  ……心なしか、今朝よりも暗い顔をしてないか?  冬人は豚汁と春巻き、それときんぴらごぼうを作っているようだ。  料理の手際は昨晩や今朝と変わらないが、どことなく雰囲気が暗い気がする。 「冬人、ただいま」  声をかけられてようやく、冬人は俺が帰ってきたことに気付いたらしい。  一瞬だけハッとしたような顔をして、冬人が俺に向かって顔を上げる。 「平兵衛、さん。……お疲れ様」  昨日は俺が帰ってきたら、冬人の方から先に挨拶をしてくれたのに。……なんだか、妙にボーッとしている様子だ。  料理に集中しているようにも見えるが、どちらかと言うのなら『心ここにあらず』といった感じか。  ……もしかして、と。俺はひとつの可能性を思いつく。  ──今になって、ようやく警戒心が強くなった。……とかってこともあり得る、よな?  一日考える時間を手に入れて、冬人は気付いたのかもしれない。  ──俺と一緒に生活するということが、どういうことを意味するのか。  ──【冬樹の代わり】が、どういうことなのかを。  つまり、冬人は【恋人の代わりになる】ということの意味を、やっと理解できたのかもしれない。

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