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 食事を終え、就寝のための準備を全て終えた俺は、自室のベッドで横になっていた。  意味もなく天井を見上げて、ただただ呼吸をする。  ……俺はいったい、冬人になにをしてやれるのだろうか。  ムリヤリ抱いて、嫌われて。それなのに冬人は、俺と一緒にいなくてはならない。  それは、なぜか。……冬人が【冬樹で在ろう】とするからだ。 「クソ……ッ!」  寝返りを打ち、目を閉じる。  もしも、あの夜。冬人をレイプした夜に、今の記憶を連れて行けるのならば。  ……俺は、間違えたりしなかったのだろうか?  * * *  いつの間に眠っていたのかは、記憶にない。  だが、眠っていたのは確かだ。 「……なん、だ……っ?」  真っ暗な部屋の中で、俺は理解できない違和感によって目を覚ます。  金縛り。とは、違う。ただ一部分に、妙な違和感があるのだ。  しかも、その【一部分】というのが……。  ──なんで、下半身が熱いんだ?  薄く目を開き、どうにか現状を理解しようと目を凝らす。  ……そこで、俺は気付いてしまった。 「──冬人ッ? お前さん、なにやってるんだ!」  侵入者と、違和感の正体に。  先ず、侵入者。これは、今言った通り冬人だ。  冬人は、俺が寝た後に部屋の中へ入ってきたのだろう。  だが、そんなことはどうだっていい。……イヤ、良くはないが些事だ。  ──着目すべきは【侵入者】の方ではなく【違和感】の方なのだから。 「は、ぁ……んっ、む……っ」  片目だけを覗かせて、冬人はくぐもった声を漏らす。  俺の呼び声に気付いてはいるはずだが、返事をするつもりはないようだ。  ──イヤ、違うか。 「んっ、く……っ」  ──返事が、できないのだ。  それは、なぜか。……簡単だ。  ──なんで頼んでもいなければ命令もしていないのに、冬人の方からフェラしてきてるんだよ……ッ!  冬人の口は今、俺に対して返事をしている場合ではない。冬人の口は塞がっていて、言葉を発することができないのだ。  ……そう。  ──冬人は今、俺の逸物を懸命に咥えているのだから。 「やめろ、冬人!」  おかしい。むしろ、これを『おかしい』と言わずになんと形容したらいいんだ。  俺は確かに、冬人へ昨晩のことを謝罪した。そして俺は、確かに言ったはずだ。……『もう、冬人には手を出さない』と。  つまり、冬人がわざわざこんなことをしてくる必要がないのだ。  なのにどうして、冬人は俺の寝込みを襲ってきた?  ……イヤ。バカか、俺は……ッ。  『どうして』なんて。そんなこと、どの口が言っているんだ。  冬人は一度、俺の下半身から顔を上げる。  そして、少し潤んだような瞳でジッと俺を見つめた後……。 「──兄は、こういうことを日常的にしていたのだろう……っ?」  複雑な感情が入り交ざったような声で、そう囁いた。  ……『どうして』なんて。そんなこと、俺は分かっている。冬人は、冬樹になろうとしているのだ。  ──俺の【恋人の代わり】に、なろうとしているのだから……。

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