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慣れていないような手つきで、冬人は俺のペニスを上下に扱く。
「あなたが私に手を出さないのは、あなたが私を兄だと認めてくれていないからだろう。だから、私は兄として──あなたの、こ、恋人として、振る舞うことにした」
──なにを、バカなことを。
だが、冬人はこんな冗談を言うような奴じゃない。……つまり、これは冬人にとっては【本気】だ。
「今日は、く、口で、する……っ。後ろは、その……平兵衛さんが、使いたいときに、使っていい……っ」
「『使いたいとき』って、なに言って──」
「説明は以上だ。……続きを、するぞ……っ」
勝手に話を終わらせて、冬人はもう一度俺のペニスを咥え始める。
「ん、ふ……っ」
正直、冬人のフェラはまだまだヘタだ。たぶんどれだけ時間を費やされても、今のままでは射精なんてしてやれそうにない。
だが、そう言ったところで冬人は引かないだろう。
──クソ! その異様なまでの行動力は兄弟だな、マジで!
冬樹はかなり突飛な奴だったが、兄が兄なら弟も弟だ。
唾液の音と、冬人のくぐもった吐息。それだけが、この寝室に響いている。
……マズい、な……ッ。
冬人の口の中は、気持ちがいい。そのせいで、中途半端に勃起はしているのだ。
だからこそ、この状況はよろしくない。
勃起をしているということは、感じているということ。いっそ反応していないのならば、冬人を追い出すことだってできたかもしれない。
だが、実際に俺は反応を返してしまっている。ただ、射精できるほどではないだけで……。
分かっているのは、コレじゃ絶対にイけないということ。それだけは、寝起きの俺でもハッキリと分かる。
どれだけ冬人が頑張ろうと、冬人が望むような反応は返せないだろう。
しかし、ならばどうやって冬人を納得させたらいい?
すると不意に、ポンと答えが思いつく。……思いつくと同時に、俺は心の中で強く念じた。
──あの世で冬樹に会ったら、顔の形が変わるまで殴ってもらうしかねぇな、本当に。……と。
一種の諦めに似た感情を、抱くしかなかった。
「冬人、体勢を変えるぞ」
「ん、っ?」
俺の言葉を聞いて、冬人は眉を寄せる。
片目を隠す前髪に手を伸ばし、そのまま冬人の頭を撫でつけた。
「冬人の尻をこっちに向けろ。今からほぐすから」
どうせ冬人は、俺をイかせるまで納得しない。だがこのままでは、俺はいつまでたっても終わらせてやることができないのだ。
冬人がビクリと驚いたのが、口の振動から伝わる。
「悪いが、お前さんのフェラじゃイけそうにないんだよ。できることなら今すぐ部屋から出て行ってほしいが、お前さんは納得してくれるか?」
眉を寄せて、冬人はふるふると頭を横に振った。
「だろ? ……手を出したくはないんだが、誘ってきたのはそっちだ。逃げたいなら逃がしてやるし、続行するならこっちに尻を向けろ」
前者を選んでほしいものだが、冬人は確実に後者を選ぶだろう。
……なにが『誘ってきたのはそっちだ』だよ。そもそも大前提に、俺が冬人を騙したのが元凶だ。
俺の話を鵜呑みにしたからこそ、こんな状況になっていることくらい分かるだろうに。
「ん、っ。……わ、かった……っ」
口を離した後、冬人は小さな声でそう呟いた。
本当は、逃げてほしい。このまま、今晩は俺から離れてほしいと言外に伝えたのに。
……冬人は大人しく、俺の言う通りに動いた。
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