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驚いたように声を出して、冬人はされるがままになっている。
そんなところも全部可愛く見えてくるのだから、好意というのは厄介だ。
「一番有名になるとかなら、お前さん自身にも目指せそうだろ? ……まぁ? 俺はモチロン、お前さんには負けないけどな?」
もう一度ニッと笑ってみせると、冬人は俯いてしまった。
「私は、私のままでも……いいの、だろうか」
また冬人がバカなことを言っている。
これだけ言っているのに、なんで冬人は分からないんだよ。
──俺は。
「──俺は、そのまんまの月島冬人が好きだと思ってるぞ」
瞬間。自分で言った言葉に、思わず心の中で疑問符を浮かべる。
イヤ、うん? うん、んんん?
……今のは、どう、聞いても……?
──告白じゃねーかッ!
そう気付き、自分の発言にゾッとする。
早い早いッ! さすがに展開が早いッ! バカか俺は! 気付いたのなんて、今さっきだろ! 好きって気付いて即効告白って、早すぎどころの話じゃないぞ、オイッ!
どんだけ性急なんだよ俺は! せっかちのレベル超えてるだろ! いくつだよ! 青春真っただ中の中学生だってもう少し段階を踏むぞ!
悪い、頼む! 弁明させてくれ! 今まで好意を寄せられることはあっても、こっちが一方的に好意を寄せるなんてことなかったんだ!
だから、告白をする方の気持ちとかを、俺は全然知らなかった。
知らなかったのだが、これは……ッ!
──思っていた以上に恥ずかしいし、やけに怖くなってきたぞ……ッ!
思わず、逃げ出したくなる。だが、いっそ返事を教えてもらいたいという気持ちもあった。
俺は恐る恐る、冬人を見る。
すると……。
「は……っ? あっ、あぁ。……あり、がとう?」
ポカンとした顔で、冬人は俺を見ていた。
いつの間にか、涙も止まっていたらしい。泣きはらしたような赤い目だ。
……と言うか、その反応は、つまり……?
──もしかして、分かってないのか!
自分で蒔いた種どころの話ではないが、なんだかややこしいことになってきた気がするぞ。
思い出すのが遅れたが、冬人の中で俺は【冬樹と付き合っていた】ということになっている。
だから、俺がいきなり『好き』と言っても、友達とか同僚としての意味合いになってしまうのは、至極当然だろう。
……つまり俺は、大前提から失敗しているってことか?
レイプしたうえに兄貴と付き合っているとウソを吐き、最悪のスタート地点だ。……むしろ、マイナスからのスタートとも言えるだろう。
結局のところ、俺はいつもあの日の自分を呪うしかないのだ。
グルグルとどうしようもないことを考えていると、頭に乗せられた俺の手を払うこともなく、冬人が声をかけた。
「平兵衛さん、あの」
申し訳無さそうな顔をした後に、冬人が俯く。
「遅くなったが、その。……庇ってくれて、ありがとう。できればなにか、お詫びをしたいのだが……」
「はぁ? お詫び?」
そもそも、俺がもっと早く冬人が嫌がらせを受けていると気付いていたなら。そうすれば、こんなことにはならなかったかもしれない。
だから、むしろ俺がお詫びをしなくちゃいけないんだが……。
「なにか、させてほしい。……頼む」
さっきまで泣いていたせいで、冬人は必然的に潤んだ瞳で俺を見つめている。
……あぁ、クソ。可愛い……っ。
この状況でもそんなことを考える俺は、ヤッパリ最低なのかもしれない。
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