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第7話《Ⅰ章》俺は姫⑦

 パーンッ  ボールを打つ音が高く響いた。 「すご」  コートに叩きつけられたボールが高く弾んだ。  天井が高い。大会ができそうだ。私立校の体育館って、こんなに大きいのか。 「コート、広い」  パーンっと背中を叩かれた。 「コートの広さは一緒」 「でもっ」  すごく広く感じる。  空気がヒリヒリと生き物みたいに動いている。 (練習試合なのに)  練習試合なんかじゃ全然ない。 (これ、本気の試合だ) 「……ミロク、負けてるね」  まだ五点。  逆転できない点差じゃない。  二階通路からコートを見下ろす。 「こっからだよ、ミロクは」  傍らの友人は余裕だ。 「あの人が来た」  7番のボードを持って、コートの縁で立っている1番の選手。  その人がコートに入ると、一瞬で空気が変わった。 「スーパーエース……」 「その言い方、古い。それにポジションも違う」  あの人は…………  ダァァーンッ!!  強く。  どんな音よりも強く。  振動が空気を裂いた。  静寂する体育館。  ウォォオオオーッ!!  歓声が揺れる。 「あの人は、ウィングスパイカーだ」

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