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第9話《Ⅱ章》凶悪な天使②

 大佐和路夜(おおさわ みちや)  バレー部キャプテン。  二刀流の両利きで、どちらの腕からでも打ってくる。スイッチスパイカー、って言うんだって。 (スイッチスパイカー、かっこいい!)  でも、スイッチスパイカーは助走の足の運び、セッターとのタイミング、すごく難しいのだそうだ。  それに…… (右と左、両方で打つという事は)  練習も二倍必要だろうって思う。  右でやる事を、左でも。  すごく努力してる人だ。  そんな人にどうして、俺…… 『ごめん、狙った』  なんでサーブで狙われるような恨みを買ったんだろう…… 「名字の『大』と名前の『路』を音読みして、おうじ様って呼ばれてるんだ。俺も早く呼んで見てぇ〜、おうじ様……って。聞いてる?姫崎?」  学園の王子様に、俺、嫌われてる……  あんなにかっこよくて、努力家の先輩に、どうして?どうしよう…… 「そういえば姫崎のルームメイト、今日でお引っ越しだよな」 「あ、うん。元々家庭の事情で一時的に寮に入ってたんだって。水道管が破裂して断水になってたんだけど、家の修繕が終わったら帰るらしいよ」  無事、自宅通できるようになって良かったね。  ……って。 「アァアア〜!!」 「どうした?姫崎、落ち着けっ」 「荷物の整理、手伝う約束だった」 「お前、怪我人だから。俺が手伝ってやる」 「ありがとう。笹原、神!」 「だろ」  持つべきものは友人だ。 「あ。そういえば、新しいルームメイト、大佐和先輩だよな」  …………………………へ。 「先輩言ってたぞ。先輩の入学した年、やたら入寮希望者が多くて、先輩だけ旧寮に入れられて、そのまま取り残されたんだって。やっと新寮に入れるって」  大佐和先輩……  言わずと知れた……王子様。  俺の部屋に王子様がやって来る!  顔面にサーブぶつけた人★ (……ねぇ。どんな顔して、これから一緒に生活すればいいの?) 「ギャアアアァァァァー!!」  友人が地獄に叩き落としてきた。

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