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第14話《Ⅱ章》凶悪な天使⑦
「今度の日曜日、予定ある?」
「特には……」
「じゃ、いい?」
「えっと」
「ダメ?」
「ダメ……じゃ、ないです」
「うん」
満面の笑顔で先輩が頷いた。
「デート日和になるといいね」
もしかしてデート決定!?
呆気にとられている内に、トントン拍子に話が進んでしまった。
「姫は食べられない物ある?」
「別にないです」
「日曜までに、ランチの店決めとくね。リクエストがあれば教えて」
「あ、はい」
トントン拍子だぁ〜★
「ヒィィィ〜」
「ちょっ、どうしたの?姫。急に変な声出して。……もしかして、無理してる。断り切れなくて、デートオッケーしちゃった?」
「それ、絶対ないです!先輩とのデートめちゃくちゃ嬉しいです!」
「ほんと?」
「あまりにも嬉しすぎて、変な声出しちゃったというか……いま俺の身に起きてる事が信じられないというか……俺でいいんですか?」
「君がいいよ、姫」
プシュウゥゥゥ〜
「わぁ、姫っ。危ない」
「わわっ」
顔近い。
「ちょっ、姫。暴れないで。落としちゃうよっ」
「でも、先輩のっ」
「俺の?」
「顔がァァァー!!」
近すぎるー!!
「暴れるの禁止」
「ヒァっ」
先輩の心臓の音が聞こえた。
「もう暴れられないね」
(ここ……)
先輩の胸の中だ。
「日頃バレーで鍛えてるんだから、甘く見るなよ」
ガッシリ抱きしめられて身動きが取れない。
「むーむー」
「無駄な抵抗はやめなさい。姫」
ビクともしない。
押そうが叩こうが動かない。
「これなら俺の顔、見えないからいいでしょ」
よく……ない。
全然。
(先輩と密着してしまってる)
「やっと大人しくなった」
腕の力緩んだけど、顔上げられない。
俺の顔、真っ赤だ。きっと。
きゅっと先輩の襟を握りしめた。制服クチャクチャにして、ごめんなさい。
「じゃあ、姫。日曜日、デートよろしくね」
頭ぽんぽん。
そっと肩を抱き寄せられて、右手が降りてきた。
「お返事は?」
「はい」
心臓のドキドキがおさまらない。
「ありがとう」
ドキドキ、ドキドキ
「あのっ」
「なに?」
ドキドキ、ドキドキ
「どうして俺なんですか」
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