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第22話《Ⅲ章》教えて、お狐様⑥
「どうした?」
「なななっ」
「何を震えている?」
「なっなっなー」
「な??」
「なんで俺に」
「お礼だと言った筈だが」
「でも」
「でも?」
「俺にそんな力」
「嬉しくないのか」
ウィンクしたら、先輩が俺を好きになってくれる。
ウィンクしたら……
たったそれだけで……
「分からない……です」
そうしたら、先輩が今好きな子はどうなってしまうのだろう。
先輩の心の中から消えてしまうのかな。
(もし、そうだったら)
悲しい。
俺が、その子の立場だったらすごく胸が痛い。
(先輩も)
俺がもし、そんな事をしたと知ったら。
(どう思うのだろう)
「力を持つと大概の人間は喜ぶのだが。お主は少し違うな」
「そんな事ないです」
俺は普通の高校生だ。
(もし先輩に好きになってもらえるのなら嬉しい)
このままじゃ、俺は先輩に気づいてもらえない。でも気づいてもらえるチャンスができた。
だから心のどこかで嬉しく思ってる。
ただ勇気がないだけで。
「優しい子だ」
違うって首を横にふるけれど。
「そうだよ」
グシャリ、と。大きな手が俺の頭を鷲掴んだ。
「わわっ」
わーっ!
トントントンっ
ノックが聞こえた。
「先輩?」
帰ってきたのかも。
中で声が聞こえるから、気を遣ったのかも知れない。
「あ、はい。今開けます」
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