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第25話《Ⅳ章》訪問者は突然に②
眼の前に恋敵がいる。
(俺はまだ先輩に認識されてもいないから、恋敵でも何でもないけれど)
この人が、先輩の好きな人。
俺はかなうのだろうか。
生徒会長で人望もあって、たぶん会長だから成績優秀だ。俺なんかよりもずっと頭が良くて優しくて、背も高くて、かっこいいこの人に。
俺は挑んで、頑張って背伸びして、何か一つでも届くのだろうか。
何か一つでも優るものがあるのかな。
頑張っても俺は、先輩に選んでもらえるのだろうか。
うぅん……
会長は先輩が好きで、先輩も会長が好きなら、二人を応援するべきじゃないのかな。
(両想いなんだ……)
言葉にすると、胸にグっと突き刺さる。
俺が頑張ったら優しい先輩の事だから、気を遣ってしまうかも知れない。
応援しなきゃ……
そう考えようとすればするほど、胸がギュッと苦しくなる。
「ねぇ」
ドキンッ
心臓の音が響く。
次は何を言われるのだろう。
逃げ出したい。
でも体が動かない。
ドキドキ、ドキンドキン
心臓が不規則に脈打つ。
ぎゅっと握りしめた手から、汗が噴き出してくる。
「なんですか……」
そう言うのが精一杯で。
視線を上げられない。上げたくない。
俺は、この人にかなわないから。
「その封筒、生徒会の書類だから」
「………………へ」
ラブレターじゃない?
「信じちゃった?」
「はい」
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