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第26話《Ⅳ章》訪問者は突然に③
エエェエエーッ!
「俺、すっかり」
先輩の好きな人は会長で、会長も先輩が好きで。
「二人は両想いで」
それで、それで。
「恋人同士じゃないんですか」
「ぷっ」
あわわ、盛大に笑われてしまった。
「確かに愛はこもっていると思う」
「やっぱり」
「家賃の催促だから」
「へ?」
先輩、借金してるの?
「正確には、さっさと出てかないと家賃請求するぞ……ってやつ」
「何したんですかっ」
まさか先輩。
「寮を追い出されるんですか!」
「ここじゃない。旧寮だ」
先輩がここに引っ越してくる前に入っていた寮だ。
「あいつの荷物、まだ置きっ放しなんだ。いい加減、片付けてもらわないと」
「半年以上も」
「そう、半年以上も。正確には7ヶ月だ。これは生徒会からの最後通告だから、無視すれば荷物は処分するし、これまでの家賃と清掃費も請求する。不法占拠だからね」
先輩、きちんとしているようで、こういうところ、いい加減なんだ……
「なので、その封筒は必ず渡すように」
「はいっ」
声が上擦ってしまった。
俺、手伝おうかな。
(部屋が散らかって、一人じゃ片付けられないのかも)
すごく意外だ。
「後ね、ラブレターは」
不意討ちの声に、ドキンッ!
心臓が音を立てて胸を打った。
「自分で渡す物だから。これ、僕が渡すよ」
人差し指と中指の間に、白い封筒がひらりと垣間見えた。
ラブレター!!
間違いない。
(だって、自分で言ったんだから)
会長は先輩が好き。
先輩も、きっと会長の事が……
俺なんかが入り込む余地なんてないんだ……
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