29 / 78
第29話《Ⅳ章》訪問者は突然に⑥
「いつから演劇部に転部したんだよ」
「※@◎▲〜」
「姫崎なに言ってるか分からない」
「ぶはー」
やっと息できる!
ようやく押し付けられた衣類の山から顔を出せられた。
持ってきたのは笹原なのに、ひどい奴だな。
「先輩はバレー部だぞ」
「知ってる。時々指導に来てくれてる」
「そうだった」
春高の県代表枠を掴み取ったバレー部後輩の練習を、先輩は見に行ってる。
「部活で渡せばいいだろ」
「やだよ、先輩怖いもん」
「そうなの?」
「うん」
厳しい指導ってやつなのかな。
「当たり強いんだよ。まぁ、確かに間違った事言っちゃいないし、的確だけど」
「そうなんだ」
意外。
「だから、お前が渡せ」
「なんで俺が」
「ルームメイトだろ」
「うっ」
今日のこのタイミングはちょっと……
「色々と……」
「じゃ、頼んだぞ」
「人の話聞け」
「頼んだ!無二の親友よ」
……って、おい!
調子のいい親友だな。
「先輩片付けるの苦手なのかな」
きちんとしてそうなのに。
俺が零したって仕方ないのだけど、この大量の洋服の山を脱衣所に放って置かれたら、迷惑以外の何物でもない。
「あれ?」
これ、洋服じゃない。
「和服だ」
「え、そうのなの?」
「お前なぁ〜。洋服と和服くらい区別つけろよ。平安時代の貴族の装束で歴史で習ったろ」
「俺、その時間寝てるわ」
「〜〜〜」
……笹原が真面目にノートとってる姿、見た事ない。
「とにかく、これは狩衣」
(狩衣!!)
俺、見た。
純白の狩衣。
さっき……ついさっき。
「お狐様!!」
「おきつね、さま?」
「何でもない!笹原、これ貸して。先輩に届けてくる」
「最初っから、そのつもりだけど。……って、そっちは部屋と逆方向だろ」
「いいんだ。先輩、旧寮に行ったから」
「なんで、こんな時間に」
「生徒会長の手紙渡したら……」
荷物置きっ放しで旧寮の部屋を不法占拠しているのは、言わない方がいいよな。
「じゃあ、あの噂。本当だったんだ」
「……噂?」
「知らないのか。王子様が生徒会長に脅されているって噂」
ともだちにシェアしよう!