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第29話《Ⅳ章》訪問者は突然に⑥

「いつから演劇部に転部したんだよ」 「※@◎▲〜」 「姫崎なに言ってるか分からない」 「ぶはー」  やっと息できる!  ようやく押し付けられた衣類の山から顔を出せられた。  持ってきたのは笹原なのに、ひどい奴だな。 「先輩はバレー部だぞ」 「知ってる。時々指導に来てくれてる」 「そうだった」  春高の県代表枠を掴み取ったバレー部後輩の練習を、先輩は見に行ってる。 「部活で渡せばいいだろ」 「やだよ、先輩怖いもん」 「そうなの?」 「うん」  厳しい指導ってやつなのかな。 「当たり強いんだよ。まぁ、確かに間違った事言っちゃいないし、的確だけど」 「そうなんだ」  意外。 「だから、お前が渡せ」 「なんで俺が」 「ルームメイトだろ」 「うっ」  今日のこのタイミングはちょっと…… 「色々と……」 「じゃ、頼んだぞ」 「人の話聞け」 「頼んだ!無二の親友よ」  ……って、おい!  調子のいい親友だな。 「先輩片付けるの苦手なのかな」  きちんとしてそうなのに。  俺が零したって仕方ないのだけど、この大量の洋服の山を脱衣所に放って置かれたら、迷惑以外の何物でもない。 「あれ?」  これ、洋服じゃない。 「和服だ」 「え、そうのなの?」 「お前なぁ〜。洋服と和服くらい区別つけろよ。平安時代の貴族の装束で歴史で習ったろ」 「俺、その時間寝てるわ」 「〜〜〜」  ……笹原が真面目にノートとってる姿、見た事ない。 「とにかく、これは狩衣」 (狩衣!!)  俺、見た。  純白の狩衣。  さっき……ついさっき。 「お狐様!!」 「おきつね、さま?」 「何でもない!笹原、これ貸して。先輩に届けてくる」 「最初っから、そのつもりだけど。……って、そっちは部屋と逆方向だろ」 「いいんだ。先輩、旧寮に行ったから」 「なんで、こんな時間に」 「生徒会長の手紙渡したら……」  荷物置きっ放しで旧寮の部屋を不法占拠しているのは、言わない方がいいよな。 「じゃあ、あの噂。本当だったんだ」 「……噂?」 「知らないのか。王子様が生徒会長に脅されているって噂」

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