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第35話《Ⅳ章》訪問者は突然に12

(誰かいる!)  カーテンの向こう、影が映った。  目の前に先輩がいるのに。  じゃあ、旧寮の部屋にいるのは誰?  腕がそっと俺を下ろしてくれる。  足の裏に当たる地面の感覚が、不思議と久し振りに感じた。 「自分の目で確かめておいで」  聞き間違う筈ない。  お面の下から聞こえるのは先輩の声だ。  でも……  不安になる。  狐の面に隠された顔を見た訳じゃない。  もし部屋にいるのが先輩だったら……  純白の狩衣に身を包むこの人は……  お狐様は誰? 「怖いか、真実を知るのは」  彼は煽る。  心の底に隠した真相は見透かされている。 「知らないままでいるのも選択肢の一つだけど、お主はずっと今のままだ」  何も進まない。 「進化のない未来でいいのか」  立ち止まれば、そこにあるのは停滞だ。  そっと手を伸ばしていた。  彼に。  彼のお面に。  狐のお面を外そうとする手を嫌がらない。  寧ろ自分から、静かに……  お面の紐を解いた。 「狐は化かすものだよ」  やっぱり彼は、大佐和路夜先輩。

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