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第45話《Ⅵ章》果実は苦い①

「がんばったね」  そう言って抱き寄せようとした先輩の腕を振り払っていた。  ドンッ  弾かれたように瞳が見開いている。 「姫……」 「先輩なんか嫌いです」  なんで、こんな事。  だけど仕方ないじゃないか。  こんな姿を見られた直後に、どんな顔をして先輩を見ればいいんだろう。  取り返しのつかない言葉だと…… (俺は知っていて、この言葉を突きつけた) 『先輩、嫌い』 「姫、なんで」  声を拒絶するように、激しく頭を振る。 「言った君がなんで泣くの?」

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