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第49話《Ⅷ章》無敵の王子様①
「我々が交渉に応じると思うか」
「それでもだ」
「交渉の利益がない。お前はもう拘束済みだ。自由はない」
「だったら!」
男は言っていた。
俺は上納品だから傷を付けるな、怪我をするなと。
「床に頭を打ち付ける。痣になるし、血だって出るぞ」
「待て」
ハッと男の顔が青ざめた。
「じゃあ仲間に連絡を取れ。今すぐ先輩の追跡をやめさせろ」
「分かった」
耳にかけたイヤホン型の小型無線機で連絡を取る。
「どうした?応答しろ」
ツ、ツツー
『今すぐそっちに向かうよ』
「おい、お前は誰だ?」
『誰って……』
ガダンッ
心臓が止まりそうなくらいの大音響を立てて扉が開いた。
「巳六段学園高校3年1組 大佐和路夜。バレー部元主将で、姫の王子様だ」
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