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第55話《Ⅸ章》冷たい瞳の彼①
ゾクリと冷たいものが背筋を張った。
得体の知れない何か……
言葉で表すには抽象的で、まるで掴めない。唯一つ、確かに言えるのは星野会長が怖い。本能が警鐘を鳴らす。
早く逃げろ、と。
(なのにっ)
足がすくんで動けない。
ここにいるのは危険だ。今すぐ会長の視界の外、会長の姿が見えない場所まで逃げ出したい。
先輩とお狐様を連れて逃げなくちゃ。
大人の黒服より、高校生の会長が怖い。
拳銃を持っているからじゃない。圧倒的な威圧。存在そのものに恐怖している。
「これは僕の拳銃だ。君のお願いでも捨てない」
この人が黒幕。
裏で糸を引いていた。
けれど。
会長は拳銃を持っていても。俺が何もしなくていいという道理はない。
「動くな」
カチリ
銃口が俺を捕らえた。
「取り仕切っているのは僕だ」
まるで隙がない。黒服とは格が違う。
「この失態は何だ」
冷徹な玲瓏が黒服に落ちた。
「詫びはいい。俺は説明を求めている」
口調が変化する。いつもの穏やかで礼儀正しい生徒会長のものとは明らかに違っている。
冷たい視線が肌にヒリヒリ突き刺さる。
俺の知る星野会長ではない。
高校生でもない。
大人を従える冷酷な支配者の顔だ。
「俺の指示なしに、なぜ動いた」
カチリ
撃鉄が今にも引かれる。
「若っ」
黒服の男は彼をそう呼んだ。
怖じ気づく事なく、真っ直ぐ見上げる。
「あなたをお護りし、あなたを助けるのが私の務めです」
「それで?」
見下ろす眼は冷たい。
「若の意図を離れた行為は平にお詫び致します」
フッと鼻で笑う。
「聞いたか?姫崎君」
冷冽な視線の先は俺に注がれた。
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