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第57話《Ⅸ章》冷たい瞳の彼③
会長が俺にキスした。
姫を守る騎士のように恭しく跪き、手の甲にキス!
切れ長の目がつっと見上げる。
会長が本当に騎士みたいだ。
「ご無礼をお許し下さい」
「あのっ」
お口パクパク、金魚さん。
一連の事件は裏で会長が暗躍していて、会長が黒幕じゃなかったのー!?
「僕の部下が暴走して君に迷惑をかけてしまった」
やっぱり会長は黒服の上司だ。
「怖い思いもさせてしまった。本当に申し訳ない」
いつもの礼儀正しく丁寧な会長に戻っている。
今なら聞けるかな?
「会長は一体何者なんですか。大人のいかつい男の人を何人も従えて……」
「それはね……」
口許が小さく笑った。
その時だ。
「こんな所にいたー!」
バーーンッ
突如、扉がこれでもかと言わんくらい大きく開け放たれた。
「姫崎、帰るぞ。こいつに構ってるとロクな事がないからな」
「……って、おい!」
ピッと人差し指が会長を差す。
人を指差すのは失礼だ。
大体、そもそも……
(どうしてお前がここにいるんだァァ!)
「笹原!!」
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