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第58話《Ⅹ章》会長はほんとうに会長①

「なにボサっとしてるんだ。帰るぞ」 「だからちょっと待て」  手を掴んで引き摺るようにして引っ張る笹原だが、何の説明もなしなんて。  納得できない! 「なんでお前が出てくるの」  突然、脈絡もなく。 「兄貴がいなくなったから」 「兄貴って?」  笹原にお兄さん居たの?  人差し指がピッと差す。 「だから指で人を……」  ………………  ………………  ……………… 「エエェエエエーッ!!」  笹原の人差し指が差したその人は。 「会長!!」  笹原のお兄さんは星野会長。 「なんでっ」 「なんでって?」 「なんで言わなかったんだ?」 「聞かれなかったから」 「苗字が違う」 「『笹原』は母方の苗字なんだ。俺と兄貴は母親が違って、俺は妾の子」  複雑な家庭事情をサラっと言ったな。  正妻とお妾ってやつだ。今時そんな関係を容認している家庭があるんだ。 「どっちかっつーと特殊な家庭の分類に入るな」 「やっぱり〜」  笹原の告白にうんうんと頷いた。  つか! 「笹原と会長は家族で、関わるとロクな事がないってどんな家庭だよ」 「だって俺達の父親、星龍会組長だもん」 「そっかー」  あぁ、なるほど。  お父さん、星龍会組長なんだぁー  ………………  ………………  ……………… 「笹原ァァーッ」  お前、今。 「なんつったァッ」

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