68 / 78
第68話《ⅩⅠ章》先輩と会長⑤
話を整理せねば!
(そうでなければ俺が)
「姫崎君はなんて小悪魔なんだ」
「違います!」
誤解です。会長。
俺が会長と先輩をたぶらかす、小悪魔になってしまってる。
「さっさと早よう謝りや。二股はあかんで」
「ちがーう!」
お狐様、妙なこと言わないで。
「二股はよくない」
笹原もっ。そんな事してないから。
「若相手に二股を掛けるとはッ!」
「違いますから!」
黒服さんまで。ほんとに違うんです!
俺、一体、何回「違う」って言った?
「ねぇ、姫」
その声は透き通るほど鮮明に、鮮烈に鼓動を刺した。
「君は今、自分の置かれた状況が分かってる?」
透明な声が俺を虜にする。
声の籠から抜け出せない。先輩の艶やかでいて、真摯で、どこかで俺を計っている怜悧な瞳から視線を逸らせない。
「俺達は二人で、姫を取り合いっこしてるんだよ」
とりあいっこ……
先輩と、会長が、俺を……
「君は両方が好きなの?」
俺の言動は『俺は先輩が好き』と『俺は会長が好き』を同時に言ってしまってる。いわば俺が先輩と会長、二人同時に告白してしまってる状況だ!
「姫はズルくてひどいよ」
グイッと強く腕を引かれた。
「それでも俺は諦めないよ」
それは…………
でもだって…………
そんなのあり得ない!
ともだちにシェアしよう!