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第68話《ⅩⅠ章》先輩と会長⑤

 話を整理せねば! (そうでなければ俺が) 「姫崎君はなんて小悪魔なんだ」 「違います!」  誤解です。会長。  俺が会長と先輩をたぶらかす、小悪魔になってしまってる。 「さっさと早よう謝りや。二股はあかんで」 「ちがーう!」  お狐様、妙なこと言わないで。 「二股はよくない」  笹原もっ。そんな事してないから。 「若相手に二股を掛けるとはッ!」 「違いますから!」  黒服さんまで。ほんとに違うんです!  俺、一体、何回「違う」って言った? 「ねぇ、姫」  その声は透き通るほど鮮明に、鮮烈に鼓動を刺した。 「君は今、自分の置かれた状況が分かってる?」  透明な声が俺を虜にする。  声の籠から抜け出せない。先輩の艶やかでいて、真摯で、どこかで俺を計っている怜悧な瞳から視線を逸らせない。 「俺達は二人で、姫を取り合いっこしてるんだよ」  とりあいっこ……  先輩と、会長が、俺を…… 「君は両方が好きなの?」  俺の言動は『俺は先輩が好き』と『俺は会長が好き』を同時に言ってしまってる。いわば俺が先輩と会長、二人同時に告白してしまってる状況だ! 「姫はズルくてひどいよ」  グイッと強く腕を引かれた。 「それでも俺は諦めないよ」  それは…………  でもだって…………  そんなのあり得ない!

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