71 / 78
第71話《ⅩⅠ章》先輩と会長⑧
「姫、もう一度言うよ。俺を見て」
力なく首を振った。
もうこうするしか意思表現ができない。
「見てくれないの……」
怒っているのか、呆れているのか、無機質な声からは分からない。
けれどこれで、先輩が諦めてくれるなら……
「じゃあ、仕方ないね」
「アっ」
声がついて出た。
不意に指が伸びてきた。
顎をクイッと持ち上げられる。
「捕まえた。もう逃さない」
「せん…ぱ…い」
「怯えた声してる。俺が怖い?」
怖くない……と言えば嘘になる。
俺を責めるのだろうか。
言う事を聞かない俺をどうするのだろう。
声だけがドクドク、鼓動に響く。
「強情だね。目を瞑って……こんなにまでして俺の顔を見たくない?」
先輩、怒ってる。
静かに怒ってる。
どうしよう。絶対、視線を合わせられない。だけど逃げる事もできない。
抜け出せない袋小路だ。
どうすれば……
「まぁ、いいよ。その方が都合いい。目を開けないでね、姫……」
えっ??
一体、どういうこと??
考える時間もなかった。
あたたかい何かが覆い被さる。
俺の唇、湿って柔らかい何か……
(………………!!)
これってもしかしてーーーッ★★★
「ムウ、ゥウ…ウゥウー」
先輩の顔が間近にある。
睫毛に触れてしまう。
これってもしかしてーーーッ★★★
ともだちにシェアしよう!