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第71話《ⅩⅠ章》先輩と会長⑧

「姫、もう一度言うよ。俺を見て」  力なく首を振った。  もうこうするしか意思表現ができない。 「見てくれないの……」  怒っているのか、呆れているのか、無機質な声からは分からない。  けれどこれで、先輩が諦めてくれるなら…… 「じゃあ、仕方ないね」 「アっ」  声がついて出た。  不意に指が伸びてきた。  顎をクイッと持ち上げられる。 「捕まえた。もう逃さない」 「せん…ぱ…い」 「怯えた声してる。俺が怖い?」  怖くない……と言えば嘘になる。  俺を責めるのだろうか。  言う事を聞かない俺をどうするのだろう。  声だけがドクドク、鼓動に響く。 「強情だね。目を瞑って……こんなにまでして俺の顔を見たくない?」  先輩、怒ってる。  静かに怒ってる。  どうしよう。絶対、視線を合わせられない。だけど逃げる事もできない。  抜け出せない袋小路だ。  どうすれば…… 「まぁ、いいよ。その方が都合いい。目を開けないでね、姫……」  えっ??  一体、どういうこと??  考える時間もなかった。  あたたかい何かが覆い被さる。  俺の唇、湿って柔らかい何か…… (………………!!)  これってもしかしてーーーッ★★★ 「ムウ、ゥウ…ウゥウー」  先輩の顔が間近にある。  睫毛に触れてしまう。  これってもしかしてーーーッ★★★

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