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第72話《ⅩⅠ章》先輩と会長⑨

 嘘だ。こんなの。 (息できない)  息をする事もさせてくれない。呼吸すら奪われる。  こんなの……  俺の知ってるキスじゃない。  うぅん、キスした事ないからほんとは知らない。でも映画とかアニメとか漫画とかで。知識として知ってるのと全然違う!  頭の中がぼぅーとする。白く霞んでいく。  なのに、やめてくれない。  頭の後ろをガシっと掴まれて、離さない。強く強く、抱きしめられている。  口の中、入ってるの……先輩の舌?  俺、先輩とキスしてる。  ………!! (先輩とキスーー★★★!!) 「むむむぅー、わわっ!!」 「姫っ!?」 「ぷはー」  酸素が戻ってきた。  息できる。 「姫、途中で目を開けたでしょ。それに暴れたりして。ダメだよ」 「あうあう」  先輩からご注意を受けたけど「ごめんなさい」とも「違います」とも言えない。  お口がパクパク、金魚さん状態!  言いたい事がありすぎて、何から伝えればいいのか分からない。 「姫、『ごめんなさい』は?」  ………えっと? 「悪い事をしたら『ごめんなさい』でしょ?」  えええっ、俺が謝るのー?? 「ちゃんと言えない姫は悪い子だよ」 「………………ごめんなさい」 「許してあげる」  納得できないんだけど〜 「じゃあ、やり直そうか」 「………??」 「早く目を閉じて」 「………??」 「どうしたの?キスのやり直しするよ」 (★★★!!!) 「キャアアアアァァアアー!!!」  神様、心臓止めてもいいですか。

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