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第73話《ⅩⅠ章》先輩と会長10
「ちょっ、姫っ、どうしたの?お口パクパクさせて」
倒れなかった俺を褒めてほしい。
だって倒れたら、先輩に受け止められて、先輩の腕の中に……うあああ〜★
「姫、顔が真っ赤。大丈夫?」
キャアア、先輩の顔が至近距離に。そんなに近くで俺を見つめないで。
酸素、酸素だ。
とにかく酸素を吸い込め。
パクパクパク
「深呼吸だよ、吸ってー」
「すー」
「吐いてー」
「はー」
「そう……吸ってー」
「吐いてー」
「はー」
「すーはー」
「すーはー」
「すーはー」
「すーはー」
「へいへいほー」
「へいへいほー」
「ひっひっふー」
「ひっひっふー」
「落ち着いた?」
「たぶん……」
「良かった♪」
ほっと胸を撫で下ろす先輩の笑顔が眩しい。
「ねぇ、姫。俺は好きな人じゃなきゃキスしない」
真っ直ぐな瞳が降りてきた。
「でも、それじゃっ!」
それじゃあ…………
『それじゃあ』の続きは?
俺は何を考えたの?
そんな儚い可能性は、自分を傷つけるだけなのに。
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