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第75話《ⅩⅠ章》先輩と会長12
なんで?
どうして?
この人はズルくて卑怯なんだろう。
ドクンッドクンッ
声が鼓動をくすぐって、左胸の音、もっと早くなる。
「君と付き合うシミュレーション、ずっと君でしていた。姫が大好きです。俺と付き合って下さい」
俺は……夢をみているの?
「姫、お返事を聞かせて下さい。……うぅん、突然ビックリしたよね。すぐに答えられないなら今じゃなくてもいい。
でも……君の声が聞きたい。ねぇ、姫。俺の名前を呼んで」
「先輩……」
まるで催眠術にでもかかったみたいに。
俺の唇が先輩を呼んだ。
「違うよ」
はにかんだような微笑みがそっと優しく襲った。
「俺の名前は『先輩』じゃない」
「大佐和……先輩」
「それもハズレ。名前じゃないよね?」
「………」
「ね?とうしたの。俺の名前、忘れちゃった?」
「………路夜、先輩」
「うん、そうだよ。これからは俺の事、そう呼んで。ゆくゆくは『路夜先輩』じゃなくて『路夜さん』って言ってほしいけど、今はこれで我慢する。君が勇気を出して呼んでくれたから……嬉しいよ」
どうしよう。
心臓がバクバクして止まらない。
このまま壊れて、壊れた心臓が口から飛び出しそう。
「路夜先輩……」
「二回も呼んでくれて、嬉しいよ」
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