75 / 78

第75話《ⅩⅠ章》先輩と会長12

 なんで?  どうして?  この人はズルくて卑怯なんだろう。  ドクンッドクンッ  声が鼓動をくすぐって、左胸の音、もっと早くなる。 「君と付き合うシミュレーション、ずっと君でしていた。姫が大好きです。俺と付き合って下さい」  俺は……夢をみているの? 「姫、お返事を聞かせて下さい。……うぅん、突然ビックリしたよね。すぐに答えられないなら今じゃなくてもいい。 でも……君の声が聞きたい。ねぇ、姫。俺の名前を呼んで」 「先輩……」  まるで催眠術にでもかかったみたいに。  俺の唇が先輩を呼んだ。 「違うよ」  はにかんだような微笑みがそっと優しく襲った。 「俺の名前は『先輩』じゃない」 「大佐和……先輩」 「それもハズレ。名前じゃないよね?」 「………」 「ね?とうしたの。俺の名前、忘れちゃった?」 「………路夜、先輩」 「うん、そうだよ。これからは俺の事、そう呼んで。ゆくゆくは『路夜先輩』じゃなくて『路夜さん』って言ってほしいけど、今はこれで我慢する。君が勇気を出して呼んでくれたから……嬉しいよ」  どうしよう。  心臓がバクバクして止まらない。  このまま壊れて、壊れた心臓が口から飛び出しそう。 「路夜先輩……」 「二回も呼んでくれて、嬉しいよ」

ともだちにシェアしよう!