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第76話《ⅩⅠ章》先輩と会長13

 ぎゅっ 「今はそれだけでいい。十分だよ」  ぎゅーっ 「せんぱ……」 「ねぇ。もっと、ぎゅーってさせて」  こくり、と頷いただけなのに、それだけで心臓が壊れそう。 「ありがとう」  ぎゅーっ  先輩の体温が熱くて、でも俺の心臓の方がもっと熱い。  左胸が打ち鳴らす鐘の音が、もっともっと速くなる。  顔が熱くて……きっと俺、耳まで真っ赤だ。こんな顔、先輩に見せられない。 (じゃあ先輩は?)  ふと疑問が浮かんだ。  先輩はこんな時も、平然と爽やかにしてるんだろうか。  それとも…… 「こーら。なに見ようとしてるの?」 「あっ」  先輩に見つかってしまった。 「ダメだよ。俺の顔ちゃ」 「でも」 「でも、じゃない」  なんだかズルいと思う。俺だけ、こんなにまでドキドキして…… 「君に今の俺の顔見せられないから……このまま腕の中でじっとしてて」 (それって?)  胸の鼓動がトクンッ、トクンッ  ドキドキ、ドキンドキンッ  響いてくる。  ドキドキ、ドキドキ、ドキンドキンッ  俺の心臓の音でもある。  ドキドキ、ドキドキ、ドキンドキンッ  同時に、あなたの心臓の音でもある。  俺達は二人でドキドキしてる。 (なんでだろう?) 「フフフ」  思わず笑みがこぼれた。 「ひどいな。今、笑ったでしょう?」 「えっ?」 「分かったよ。肩、揺れたから」  ドキンッ  心臓が脈打った。  けれど、そんな些細な事も見逃してくれないあなたにちょっぴり嬉しくなってしまう。 「あっ、また笑った。俺、真剣なのに」 「ひゃっ」 「悪い子にはお仕置き♪」  チュって、唇が俺のおでこを突っついた。 「ビックリしたね。でも、どうせならスーツの裾をぎゅって握るよりも、君もぎゅーってしてほしいな。ダメ?」 「ダメ……」 「ほんとに?」 「……なんかじゃない……です」 「じゃあ、早く」  ぎゅー

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